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【5つの機能を集約したコンプリケーションウオッチ⁉】大塚ローテック9号の全貌とは

去る9月22日、現代の名工である片山次朗氏が手掛ける“大塚ローテック”から、モジュールだけでなく、ベース部分までも独自に設計を行った自社製ムーヴメントを搭載する“9号”が発表された。

大塚ローテック 9号

片山氏によると、およそ9年前から製作を開始し、試行錯誤の末に今回の1本が完成したとのことであった。

本作では、従来のラウンドケースモデルから一変し、48mm×30mmサイズのスクエアケースに、ジャンピングアワー、リワインディングニミッツ、アワーストライキング、トゥールビヨン、パワーリザーブインジケーターなどの複雑機構を盛り込んだコンプリケーションウオッチとして仕立て上げられている。

先に述べたとおり、独自に設計を行った手巻き式の自社製ムーヴメントは、多様な機能を搭載した様子が、寿司下駄(SUSHIGETA)の上にネタを並べる様子に似ていたことから着想を得て、“Cal. SSGT”と命名されている。ムーヴメントの寸法は41.3mm×26.4mm、高さは10.35mm、部品点数は278点。香箱などの一部の部品には、ユニタスの名で知られるETAのCal.6498の部品を使用している。

リワインディングミニッツによる時刻表示は、サファイアクリスタル製のディスクに刻まれた文字が、文字盤の右半分に配置された畜光ブロックによって下から照らされており、上のディスクが時、下のディスクが分を示している。また、分を表示するディスクは完全な円形にはなっておらず、切り欠きの入った扇状のディスクがレトログラード表示の要領で往復を繰り返す構造となっている。

正時になるとアワーストライキングが作動し、リューズ類の配置されたケース側面から文字盤上部まで伸びた、パイプラインのようなリン青銅製のゴングをハンマーが叩く。このヒートパイプのような構造は、ゴングの全長を稼いで音量を大きくする役割を果たしつつも、片山氏がこの時計を開発する際に着想を得たという、電力メーターや工場群の配管を思わせるデザインにも一役買っている。

トゥールビヨンは通常の物とは異なり、テンプの中心軸をオフセットさせた構造を採用し、ダイナミックな動きを演出。テンプも新円形ではなく、切り欠きの入ったH字の形状を採用しており、片山氏いわく、「より動きをわかりやすくし、ダイナミックな動きを表現するために、この形状を採用しています」とのことだ。歩度調整には、緩急針ではなく、C形リングのマスロットを用いたフリースプラング方式が採用されている。

【画像】ムーヴメントの構造や各機能のディティールを確認する

そして、アワーディスクの中心軸、アワーストライキングのハンマー可動軸にはミネベアミツミ製の、9号のために開発した特製ルビーボール・ボールベアリングが採用されている。今回、9号に採用された世界最小ボールベアリングと特製ルビーボール・ボールベアリングは、アワーストライキングやトゥールビヨン、リワインディングミニッツといった複雑機構の心臓部で、精密で滑らかな動きを支える重要な役割を担っている。特にこの特製ルビーボール・ボールベアリングは、時計の伝統的な部品素材であるルビーと現代の超精密技術を融合させた革新的な部品と言えるだろう。ルビーの輝きはその芸術性に加えて機構のアクセントとなり、ルビー固有の硬度と滑らかさがベアリングの摩耗を極限まで抑制する。また、温度変化にも強く、複雑な機構に長期的な精度と信頼性をもたらしているのだ。

ケースサイドまでを覆うサファイアクリスタルが特徴的な、ショーケースを思わせる形状のケースには316Lステンレススチール製を採用。ケースバックを腕に沿うように湾曲させたケース造形が、優れた着用感を実現している。

価格は1760万円と公表されているが、今回の1本がようやく完成したという状況であるため、発売日や販売方法、量産について、現時点では目途が立っていないとのことである。

 

 

【問い合わせ先】
大塚ローテック
https://otsuka-lotec.com/

 

文◎Watch LIFE NEWS編集部

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