アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ナディーン
トレタケ形ケース
今回は、1940年代に生産されたナディーンという腕時計とともに、時分針から独立した位置で秒を表示するスモールセコンドについて解説する。
今回紹介するナディーンは、現在ではブランド自体も消えてしまい、歴史や資料も少ないため詳細は不明だが、エボーシュメーカーのムーヴメントを搭載した腕時計を取り扱っていたブランドとして、現在でもアンティーク市場に姿を見せることがある。
アンティークウオッチの中では、いわゆる“無名ブランド”として区分されてしまうが、当時としては高価な時計にのみ採用されたステンレススチールをケース素材に採用している点に注目したい。さらに、ロンジンの”トレタケ“を彷彿とさせるステップドケースや、3点式スクリューバック防水ケースを採用しており、実用性と耐久性を重視したかなりコストのかかった時計であったことがうかがえる。
年式を考慮しても比較手状態が良く、ケースや文字盤にも大きなキズや腐食は見られない。
ムーヴメントには、スモールセコンドを特徴とするフォンテメロン社製Cal.150を搭載。実用時計であるため、華やかな装飾は施されていないものの、故障の要因が少ないシンプルな構造と、十分な厚みをもつ部品構成が魅力的だ。

【写真の時計】ナディーン トレタケケース。SS(29mm径)。手巻き(Cal.FHF-150)。1940年代製。26万4000円。取り扱い店/プライベートアイズ
【画像:重厚なケースやスモールセコンド仕様のムーヴメントを見る(全6枚)】
スモールセコンド、通称スモセコは、6時位置や9時位置などに独立して配置される秒表示で、時計内部の歯車のうち“1分間に1回転する歯車”に針を取り付けることで秒を表示する方式である。
特殊な構造を除けば、多くのアンティークウオッチでは、ゼンマイを収めた香箱車を1番車とし、2番車が分針の役割を担い、4番車の軸が秒表示を司る構成となっている。この4番車が文字盤の3時位置や6時位置に配置されることで、スモールセコンド特有のレイアウトが完成するのだ。
その後、第2次世界大戦において、秒単位での正確な作戦行動や計時の重要性が高まると、秒数をより直感的に判読できるセンターセコンドが普及していく。当初は、スモールセコンド用ムーヴメントをベースに、3番車に追加の歯車を設け、分針を担う2番車の軸を貫通させて秒カナを通すことで、秒針を文字盤中央へ移動させる改造が行われていた。しかしその後、センターセコンド専用として歯車配置を最適化した、無理のない設計のムーヴメントが開発・生産されるようになっていく。
現在では、スモールセコンド専用として設計されたムーヴメントは非常に少なく、ETA6497(ユニタス6497)やプゾー7001、自動巻きではあるがザ・シチズンに採用されているCal.0200、あるいは一部の独立系ブランドのムーヴメントなど、例を挙げても決して多くはない。むしろ、センターセコンド専用ムーヴメントをスモールセコンド仕様へと逆行的に改造したモデルまで登場しているほどだ。
スモールセコンドの魅力は、何といってもアンティークらしいバランスの取れたフェイスデザインと、パーツ点数の少なさに由来する故障の少ないシンプルな構造が両立している点にあるのではないだろうか。
スモセコの時計が欲しいものの、現行品ではなかなか選択肢が見つからないという場合は、ぜひアンティークウオッチにも目を向けてみてほしい。
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文◎LowBEAT編集部
