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【1980年代製とは思えない!】30年代の古典的な設計を守り続けたIWCの懐中時計の魅力に迫る

アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。


IWC
懐中時計

今回紹介するのは、1980年代に製造されたとされるIWCの懐中時計、Ref.5301だ。

80年代製と言うと、ポストヴィンテージなどに分類される比較的新しい年式の時計だが、47mm径の大振りなケースやアラビアインデックスのホワイト文字盤、スモールセコンドを備えた重厚なムーヴメントなど、どう見ても30年代頃の懐中時計を思わせる要素が満載の逸品である。それもそのはず、本個体に搭載された手巻きムーヴメントCal.972は、30年に発表されたCal.97系をベースとした設計のムーヴメントだからだ。

Cal.97は、ジュネーブ時計学校で教授を務めたロジェール・ピュゾーが手がけたとされ、ジュネーブ風に分割された受け板や、教科書的と言われるほど堅実でバランスの取れた設計が高く評価されていた。まさにその評価のとおり、同時期のCal.95とともに、時計学校の教材用ムーヴメントとして用いられた歴史も持っているそうだ。

【写真の時計】IWC 懐中時計。Ref.5301。SS(47mm径)。手巻き(Cal.972)。1980年代製。24万8000円。取り扱い店/WatchTender銀座

【画像:文字盤や針、クラシックな設計のムーヴメントの状態を見る(全5枚)

そして、その後継機として73年まで製造されたCal.972では、テンプの軸受けに耐震装置インカブロックが追加され、実用品としてさらに堅牢性を高める工夫が施されている。
角穴車の上から受け板を被せる構造や、ブレゲひげ(巻き上げヒゲ)のヒゲゼンマイ、IWC独自の微調整ネジを備えた緩急針などを備えた大径キャリバーでありながら、実用性も重視した耐震装置を搭載するムーヴメントは、マニア必見の、他に類を見ない希少な存在と言えるだろう。

今回紹介する個体は80年代製であるにもかかわらず、それ以前に製造が終了していたCal.972が搭載されている。その理由としては、在庫として保管されていたムーヴメントを使用した可能性が考えられる。

70年代半ば、世界的なクォーツショックによって機械式時計の需要が激減し、多くのメーカーが倒産の危機に追い込まれるなか、IWCはあえて伝統的な機械式時計の専門メーカーとしての道を模索する道も開拓していたようだ。今回紹介した懐中時計も、そうした姿勢のもとで生み出されたモデルのひとつではないだろうか

ポストヴィンテージとも呼べてしまう高年式の時計ではあるが、失われかけたスイス時計の伝統を80年代まで繋ぎ止めた、まさにタイムカプセルのような一本とも評価できるはずだ。半世紀にわたって受け継がれた基本設計は、当時の技術者たちの設計思想を守り抜いた、ロマンあふれる時計なのである。

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文◎LowBEAT編集部/画像◎WatchTender銀座

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