アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
シチズン
ホーマー
今回紹介するのは、1960年代に製造されたシチズン ホーマーだ。
数多くのバリエーションが展開されていたホーマーのなかでも、今回の個体は比較的初期に製造された、タータンチェック柄の文字盤を採用したモデルである。ブランケットやマフラーを思わせる愛らしいデザインが目を引く一本だ。
ホーマーは1960年に誕生し、当時のセイコーとのシェア争いにおいてシチズンを支えた重要なモデルであった。本モデルは精度と耐久性を重視しながら、組立ての自動化も見据えた合理的な設計を採用している点が大きな特徴だ。
ムーヴメントは、当時多くのメーカーがセンターセコンド機に採用していた、2番車と4番車をセンターに配置する非常にベーシックな設計を採用。それ以前のシチズン製・本中三針ムーヴメントと比較すると、ムーヴメント径は大型化され、輪列や受け板の設計も最適化されたことで、サイズアップしながらも厚みはある程度抑えられている。

【写真の時計】シチズン ホーマー。Ref.HO140302。GF(34mm径)。手巻き。1961年製。6万8000円。取り扱い店/ムーンフェイズ
この基本設計が非常に優れていたため、ホーマーは製品ごとのニーズに応じた柔軟な展開が可能だった。例として、子供向け製品“キンダータイム”のような廉価モデルでは仕上げを簡略化し、軸受けの石数を減らしてコストを低減。一方で、高精度を求められた“クロノマスター”のような高級機では精度を徹底的に追い込み、さらに秒単位の正確さが求められる鉄道時計には秒針規制機能(ハック機能)を追加するなど、幅広い用途に転用できる懐の深いムーヴメントだったのである。
また、ホーマーにまつわるエピソードも興味深い。当時から関係のあったブローバと契約し、同社の普及ブランド“キャラベル”に搭載されたほか、60年にはインド政府と技術援助契約を結び、プラントを輸出。その結果、国営企業HMT社においてホーマーのライセンス生産が行われ、近年に至るまで同型の手巻き時計が製造されていた。ホーマーは日本の時計産業のみならず、海外の時計産業の発展にも貢献したムーヴメントだったのだ。
国産アンティーク時計のなかでは、廉価な普及機であるがゆえに注目されることの少ないホーマー。しかしその背景や製品の変遷を辿れば、確かな実力を備えた歴史的名作と呼ぶにふさわしい存在であることが分かるだろう。コアな国産時計ファンから長年支持され続けてきたシチズン ホーマーに改めて注目したい。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎ムーンフェイズ
