アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
セイコー
ロードマチック スペシャル
今回取り上げるのは1972年頃に亀戸に工場を構えていた第二精工舎で製造された、セイコーのロードマチックスペシャルだ。
68年から諏訪精工舎で生産が開始され、当時の学生やサラリーマンをターゲットとしていたロードマチック。セイコーの自動巻き腕時計であるマチックシリーズの流れを汲んだ実用時計として、日本国内において高い人気を誇ったシリーズだ。
デイト、またはデイデイト表示のカレンダー機能や、10mmを切る薄型かつコンパクトな防水ケース、薄型で巻き上げ効率や携帯精度が優れたムーヴメントなど、当時の市場で求められていた機能を一つに凝縮した時計であった。
発売当初は諏訪精工舎が設計・製造を行ったCal.56系を搭載しており、ノンデイトのCal.5601、デイト表示のみのCal.5605、デイデイト表示を備えたCal.5606の3種類のムーヴメントに加え、様々なケースデザインを採用したモデルを展開していた。
現在の中古市場(インターネットオークションやフリマアプリ、アンティーク時計店など)においても、本モデルは流通量が比較的多く、当時の販売規模の大きさがうかがえる。中級機~準高級機として位置づけられていたが、現代の基準から見ても非常に高い完成度を誇っており、ウィークポイントであるカレンダー機構を除けば、いまなお実用機として十分通用するスペックを備えている。
その中でも、本個体は1970年代頃に登場したスペシャルの名を冠する、亀戸精工舎製のロードマチックだ。特別感のあるネーミングながら、一般向けに量産されていたモデルで、通常モデルとの価格差もほとんどなかったことから、ロードマチックシリーズのバリエーションのひとつとして展開されていたようだ。

【写真の時計】セイコー ロードマチック スペシャル。Ref.5206-6081。SS(35mm径)。自動巻き(Cal.5206)。1972年製。5万4800円。取り扱い店/WTIMES
【画像:セイコースタイルの流れを汲んだケース形状や文字盤の状態を様々な角度から見る(全5枚)】
セイコースタイルの流れを汲む、平滑面を強調したケースデザインが特徴的で、70年代頃のセイコーらしく風防にハードレックスガラス(無機ガラス)を使用している。バトン針やバーインデックスのクオリティも準高級機とは思えないほど高く、エッジや平滑面がしっかりと出た仕上がりが魅力的だ。植字のアワーマーカーに関しては、段のついた独特な形状であり、70年代のセイコーの技術力の高さを感じさせるポイントだ。
ムーヴメントには薄型自動巻きのCal.5206を搭載。毎時2万8800振動のハイビート仕様で、日付けと曜日の瞬間切り替え機能を備えたハイスペックムーヴメントだ。巻き上げ方式にはリバーサー式を採用しており、輪列配置からは同工場が60年代に製造していたCal.51系を思わせる設計となっている。文字盤6時位置の“Special”表記が筆記体であれば瞬間日送り機能付きのCal.5206、ブロック体であれば通常のカレンダー機能をもつCal.5216と判別できる。
注意点として、Cal.52系は潤滑油が不足した状態では自動巻き機構まわりに不具合が生じやすく、摩耗や破損を招く可能性がある。時計を振った際や手巻きを行った際に異音や引っ掛かりを感じた場合は、速やかに時計店で整備を受けることを推奨する。特に手巻き機構がやや複雑であるため、手巻きを多用すると負担がかかる点は覚えておきたい。
また、Cal.5206特有の瞬間日送り(デイトジャスト)機能も潤滑油不足に陥ると不具合を起こしやすいため、しっかりとオーバーホールされた状態での使用をおすすめする。そのためか、後継モデルのCal.5216では瞬間日送り機能が省かれ、通常のカレンダー機能に変更されている。
優れた性能を引き出すために、かなりクセのある設計を採用したロードマチック スペシャルだが、そのスペックは現行機にも引けを取らない実力を秘めている。同時期のキングセイコー スペシャルやクロノメーターモデルにも採用され、後のCal.4S系の設計ベースともなったCal.52系ムーヴメントは、機械式腕時計の生産技術を一時的に失ったセイコーが、技術を継承していくうえで欠かせない存在であった。話題に上ることは少ないが、セイコーの歴史を語るうえで重要なキーストーンと言えるムーヴメントなのだ。
数々の名作の陰に隠れた国産時計の名脇役とも呼べるロードマチック スペシャル。人気モデルの陰に隠れた実力派の実用時計にぜひ注目してみてほしい。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎WTIMES
