LowBEAT magazine ピックアップアイテム 国産時計 小スライド @kikuchiのいまどきの時計考

【製造期間わずか約1年】希少な63年前のヴィンテージセイコー。その裏ブタに残る当時のブルーフィルムが意味することとは?|菊地吉正の時計考

いきなり裏ブタの写真で恐縮だが、これはセイコーのライナー クロノメーターの裏ブタである。1960年に諏訪精工舎が開発した薄型手巻き時計の高級機“ライナー”。それをさらに高精度仕様にしたうえに歩度証明書まで付けて63年頃に販売された代物だ。

このライナー クロノメーターだがバリエーションは存在しない。サンレイ仕上げのシルバー文字盤にアプライドのバーインデックスというまさにグランドセイコーの通称44GSに繋がる精悍なデザイン。そして6時位置にはAD(アップリケダイアル)を示す八芒星マークが添えられているなど、この無駄のないシャープで端正な顔立ちはやっぱり見ていて飽きない。

搭載する手巻きムーヴメントもグランドセイコーと同じく微動緩急針を備えたCal.460。金メッキが施されるなど細部の仕上げも美しく、手の込んだ作りはまさに高級機ならではだ。さらに薄型でありながらもスクリューバックという点も大きな魅力と言えるだろう。

このように性能や仕上げを備えながらも製造期間は短く1年も満たなかったと考えられており、希少性においてはグランドセイコーのファーストモデルを超えるとさえ言われるほどだ。

そんな希少モデルをなぜトップ写真に裏ブタをあえて掲載したのか。それはこれがほぼ未使用に近い状態だということを意味するからだ。本来であれば何も考えずに剥がしてしまいそうだが、ことアンティークやヴィンテージの世界では、プライスタグや取り扱い説明書、BOXなど本来ならば捨ててしまうものがこうやって当時のまま残っていること自体がとても貴重となる。

ましてやこんな真っ先に剥がして捨てられるであろう販売時の裏ブタの保護フィルムは、傷など無い外装の状態の良さとともに未使用に近い個体だということを思わせるもののひとつ。そのためあえて剥がさずに流通するというわけだ。見た目には何でと思われるかもしれないが、実は市場価値という点でもとても重要な意味をもつ。国産アンティークには裏ブタの保護フィルムが付いた個体がたまに流通しているので覚えておくといいだろう。

(※LowBEATマーケットプレイスに掲載された記事を元に一部内容を変えたものです)

【画像】他の写真をもっと見る

時計:セイコー ライナー クロノメーター
セイコー ライナー クロノメーター。Ref.46999。SS(36mm径)。1963年製。159万5000円。【LB-260054】
協力◎JAPAN VINTAGE WATCH SHOP
https://lowbeat.jp/jvw-shop/year/1960/seiko-champion-calender/

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

次のページへ >

-LowBEAT magazine, ピックアップアイテム, 国産時計, 小スライド, @kikuchiのいまどきの時計考
-, ,

PHP Code Snippets Powered By : XYZScripts.com