【知っておきたい腕時計の基本】クォーツ時計の精度はどれくらい?

 機械式ムーヴメントに比べ、はるかに高い精度を出すことができるクォーツムーヴメント。
 時間が狂うことがほとんどないため、その精度が具体的などの程度なのか、把握している人は意外と少ないのではないだろうか。

 結論から言うと、一般的なクォーツの精度は月差±20秒程度。対する機械式の精度が日差−10~+20秒程度と言われているため、その差は歴然だ。クォーツ時計の場合、時刻合わせを行うのもせいぜい半年に1回というところだろう。
 ただこのクォーツムーヴメントには、もっと高精度な、年差レベルを実現したムーヴメントがある。

 機械式腕時計の検定基準としてCOSCクロノメーター認定がよく知られるところだが、実はこれはクォーツムーヴメントにも同様の検定がある。もちろんその認定基準は機械式同様に厳格なものだ。検定項目のひとつである平均日差を例を挙げると、その認定基準値は±0.07秒(機械式は−4〜+6秒)と、かなりの高い精度が要求されてる。
 この認定基準値を年差に換算すると±25秒程度となるため、認定を受けたムーヴメントは、かなりの高精度と言えるが、実はクォーツでCOSCクロノメーター認定を積極的に取得する時計メーカーは意外と少ない。その理由のひとつとしては、決して安くない検定費用が挙げられるだろう。
 ちなみに、COSCクロノメーター認定を受けたクォーツムーヴメントのほとんどが、“100%クロノメーター”を宣言しているブランイトリングのものだ。同社ではこの高精度機を“スーパークォーツ”と呼び、その年差±15秒とも言われる。

100%クロノメーターを宣言しているブライトリングでは、クォーツモデルもCOSCクロノメーター認定を受けている

 もっとも、COSCクロノメーター認定を受けていないクォーツムーヴメントのなかにも、年差レベルの精度を実現しているものがある。
 例えばブローバの“ハイパフォーマンスクォーツ”やセイコーの“9F系キャリバー”などだ。前者は通常、水晶振動子が2本しか用いないところ、3本用いることで年差数十秒というレベルまで高めており、後者にいたってはその精度が年差±10秒程度というから驚きである。

セイコーの9F系キャリバーは年差±10秒という高精度に加えて、従来型クォーツの約2倍のトルクを実現しているため、太く長い針を採用することもできる

 そしてこの2社よりもさらに優秀な精度を実現しているのが、シチズンの“Cal.0100”で、その精度はなんと年差±1秒だ。これは通常の音叉型水晶振動子の256倍の周波数をもち、かつ気温の変化や腕振りなどで生まれる重力変化の影響を受けにくい“ATカット型水晶振動子”を採用し、高精度を実現している。

 電気エネルギーによって、機械式でいうテンプの役割を担う水晶振動子が振動し、それがIC(電子回路)を通して歯車に動力を伝えるという原理自体は、基本的にどれも同じなのだが、標準的なクォーツムーヴメントと年差クォーツではなぜここまで差が生まれるのか。
 その秘密のひとつに温度補正機能が挙げられる。クォーツの心臓部である水晶振動子は、実は温度変化に弱い性質があり、それが精度に影響を与えてしまうのだ。高精度なクォーツのほとんどに、小型の温度センサーが内蔵されており、実際の気温に応じて歩度を自動調整する機能が付いている。そしてこの補正回数が多いほど精度はより安定していく。対して標準的なクォーツムーヴメントでは、この温度補正機能が付いていないものも多い。

安価なクォーツ時計に搭載された汎用ムーヴメント。精度もさることながら、美観という点でもセイコーの9F系キャリバーに断然劣る

 

文◎堀内大輔(編集部)