【第11回】ポストヴィンテージ時代の腕時計|あまり知られていない1970年代のスイス製クォーツ時計

驚異的な振動数を実現したオメガのコンステレーション・メガクォーツ f 2.4MHz

 1970~90年代。この時代に製造された時計をポストヴィンテージとして紹介している本連載。今回は1970年代のスイス製クォーツ時計にスポットライトを当ててみたい。

 1970年代といえば日本製クォーツ時計が台頭し、“クォーツショック”という言葉が生まれたように、スイスの時計産業を衰退させるほどの多大な影響を与えた大きな要因のひとつとなったことは時計好きでなくてもご存じの人は多いだろう。

 ではそのそもクォーツ時計とはどんなものかご存じだろうか。クォーツとはあの水晶のことを指す。この水晶は電圧を加えると正確に振動する性質があるため、これを利用してそれまでの機械式時計のテンプの代わりに、その水晶振動子から得られる正確で定期的なパルスを1秒に1回の電気信号に変換。その電気信号によってモーターが歯車を動かし、秒針が1秒進むという仕組みだ。もちろん動力源は電池である。

 なおクォーツ自体は、1927年にアメリカでウォーレン・マリソンが発明し、日本では1937年に電気通信工学者の古賀逸策が国産第1号のクォーツ時計を開発した。

1969年に発売したセイコー初のクォーツ時計“アストロン”

 そして、セイコーはそんなクォーツ時計を超小型化することに成功。1969年に世界初のクォーツ式腕時計“アストロン”を発売したのである。その後、セイコーはその特許を公開したことで、時計の世界は機械式からクォーツ主流の時代へと一気に突き進んでいったのだ。

 ちなみに、セイコーよりも先に世界で初めて電池式腕時計“ヴェンチュラ”を1957年にハミルトンが発売、続いてブローバが、NASA(アメリカ航空宇宙局)の技術を導入して1960年に開発した音叉時計“アキュトロン”を発表し、高精度腕時計として世界に名を馳せた。しかしながらブローバは特許独占を図ったことで普及が進まず、後のクォーツ時計が世界的に台頭したと言われる。

ブローバの音叉時計“アキュトロン”はかなり個性的な作りだった

 さて、この動きに対してスイスは何もしなかったわけではなかった。やはりアキュトロンの登場は衝撃だったらしく、スイスも慌てて電気時計に関する研究機関を立ち上げている。そして、ジラール・ペルゴが二つの電池を備えたスイス初のクォーツ時計“エルクロン”をセイコー・アストロンが登場した2年後の71年に発表。そのクォーツムーヴメントの周波数“3万2768 ヘルツ”は、現在も世界の時計メーカーが採用する標準規格となっている。

左がスイス初のクォーツ時計、ジラール・ペルゴの“エルクロン”、右はジャガー・ルクルトのマスター・クォーツ

 また、スイスメーカーでも特に積極的だったのがオメガで、耐久性が高くて扱いやすく、高精度なクォーツムーヴメントの開発に成功している。そして74年には、月差1秒以内、日差0.002秒以内という驚異的な高精度を実現したコンステレーション・メガクォーツ2.4 MHz(トップの写真参照)を発売している。2.4 MHz=2.4メガヘルツというと、1秒間に24万回振動していることになる。機械式ではハイビートと呼ばれるものでも1秒間に8振動。当時いかに驚異の振動数を誇る高精度モデルだったかがわかる。

 このオメガのように高性能なクォーツ時計を開発して、日本メーカーに真っ向勝負を挑んだスイスの時計メーカーも確かにあった。しかしながら、すでに最新の設備を整え、大量生産を実現した日本メーカーの敵ではなかったのである。

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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