【Chrono24は信頼できるのか?】総編集長・菊地吉正が世界最大の高級時計マーケットプレイスのCEOティム氏に直接聞いた!

ウォッチスキャナーを備えたChrono24のアプリは全世界で550万もダウンロードされている

 みなさんはドイツに本拠を構えるChrono24(クロノツインティーフォー)という高級腕時計のマーケットプレイスをご存じだろうか。日本で言うところの楽天みたいなものなのだが、扱う商品は高級時計が専門でしかも越境ECなのである。つまりは国内だけでなく様々な国の出店社から高級腕時計が買えるショッピングサイトというわけだ。

 おそらくはほとんどの人がeBayを思い浮かべるのではないか。確かに大まかな仕組みとしては同じなのだが、Chrono24についてはeBayとの決定的な違いがひとつある。それは「買い手保護制度」だ。

 時計を専門とする筆者も実のところかなり前からChrono24は知っていた。しかしながら、かつては単に消費者と販売業者をつなぐポータルサイトの延長という認識だった。お恥ずかしい話だが今年になって、手持ちの時計の写真を撮るだけで瞬時に実勢相場が表示される「ウォッチスキャナー」というサービスの存在を知り、あらためてWEBサイトを見てみると、買い手保護制度を設けるなど単なるポータルサイトではないことに驚いたのである。そこで、俄然興味がわき、直接CEOのティム氏にリモートインタビューを申し込んだというわけだ。

 そして、日本のユーザーがいちばんに気になるChrono24は安心して利用できるのかについて、買い手保護制度の仕組みと合わせて今回詳しく聞いてみた。ちなみにインタビューは9月10日。

中央がChrono24のCEO、ティム・シュトラッケ氏、右はマーケティングマネージャーで日本のマーケテイングも担当するアビー・レイ氏、そして筆者と通訳をしてくれたウェブ・マーティン氏。ちなみにインタビュー当日、ティム氏はオメガのスピーディ チューズデーの“ウルトラマン”を着けていた(驚)

―――― 最初にChrono24についてお聞きします。現在のスタイルのマーケットプレイスになったのはいつ頃からですか?

 Chrono24自体は2003年に設立されたサイトです。それを私と友人2人の3人で2010年に買い取りました。そして、様々な国の出店社の時計を紹介する単なるポータルサイトから、現在のようなマーケットプレイスへと数年かけて構築してきたのです。

 我々3人はもともとIT関連ビジネスのスタートアップの経験も多く、そのなかにはマーケットプレイスもありました。加えて3人とも高級腕時計が趣味だったこともあって、高級時計関連ビジネスについてはもともと興味があったのです。

 きっかけは、私自身が中古時計をネットで買おうとしてeBayで時間をかけて検索していたものの、結果的に満足のいくものが見つかりませんでした。そこでほかにも検索したところ、このChrono24の存在を知ったのです。

 私は当時、既存のマーケットプレイスにとても不満を抱いていました。そのためこのプラットフォームを活用すれば、私のような時計愛好家が満足できるマーケットプレイスに再構築できるのではないかというアイディアが浮かんだのです。そのため買収したのです。

―――― 2010年にChrono24を手に入れて、真っ先に取りかかったこととは何ですか?

 まずは優秀なスタッフを採用しました。その次にChrono24のバックエンドにあるデータベースをほぼゼロから作り直したのです。当初は多くても15〜20名の規模を想定していたのですが、現在では350人規模の会社にまで成長しました。

 現時点ではおそらく世界中にいる時計愛好家の5割ぐらいがChrono24を利用していると思います。そのためおかげさまで毎年コンスタントに10〜15%成長し、2020年の取引総額は前年度と比べて25%増加。2億ユーロに到達する予定です。

 これはユーザーに対してそれなりに満足度の高いサービスが提供できているからだと思います。しかし、さらにもっと良くできるのではないかと思っていますから、まだやることはいっぱいあると考えています。

―――― ではここからサービス内容について質問したいと思います。ユーザーが時計を購入する場合に、最も気になるのは出店社(個人も含む)が信頼できるところかどうかだと思います。それに対して厳しい審査を行っているということですが、具体的に教えてください。

 まずは会社の履歴や登記についての登録書類をしっかりと確認します。そして、すでに出店しているディーラーにもヒヤリングを行い、業者間での情報もチェックします。企業秘密の部分もあって詳しくは言えませんが、このようなことも含めて非常に多くのチェックリストがあって、そのすべてをクリアしなければ登録できない仕組みを取っています。

―――― これまで、悪徳業者などの出店があった事例はありますか?

 はい、残念ながらありました。ただし、買い手保護制度のひとつにTrusted Checkout(トラスティドチェックアウト)というサービスがあるため、もし万が一そのようなディーラーがいたとしても、購入金額が100%戻ってくるため大きな被害にはなりません。

商品の閲覧ページ。各商品の右下にある出店社の所在地を示す国旗を見ると日本が多い。これは閲覧している人の国の出店社を優先で表示する仕組みとなっているためだ。なお、星印の右に記載されている数字は、その出店社がこれまで販売した時計の本数を示しているのだが、その数の多さに驚く

―――― Trusted Checkout(トラスティドチェックアウト)というサービスは特に購入者にとってはとてもありがたいサービスですね。あらためてこのサービスの仕組みとメリットについてと、すべての商品に対して適用されるのかを教えてください。

 これはエスクローサービスのことです。購入者は代金をディーラーの口座ではなく、その間に入る第3者機関である信託銀行の口座に振り込みます。つまりお金を預かっているのはディーラーでもなければChrono24でもないのです。

 購入ボタンを押して取引が完了し、商品が届いてから14日間以内であれば、いかなる理由、例えば「似合わない」「気が変わった」などの個人的な理由であっても返品は可能となっています。そして現品を未使用の状態で返品すれば100%お金が戻ってくる。買い手にとってはほぼ100%安全な保障サービスなのです。

 なお、Trusted Checkoutの対象国であれば、ディーラーの商品は必須です。個人で出店されている場合はオプションサービスとなっていますが、ほとんどの方が付けているため、現在は全商品の約95%が対象となっています。ちなみにChrono24への出店社の内訳は個人の方は全体の約10%、残りの90%がディーラーです。

―――― どんな理由であっても返品できるとなると、出店社側の返品リスクが高くなるため、出店に二の足を踏みそうですが? 

 返品が簡単にできると言っても、実質的な返品率は5%以内(3〜4%)なのです。我々が考えているのは、ユーザーは返品が簡単にできるという安心感があるため逆に買いやすい。その結果さらにものが売れるという理論なのですね。その点はディーラー側も納得していただいております。事実、返品率が低いこともあってそれほど問題としていないのでしょう。

 なお、返品の理由として最も多いのは、ディーラーによる商品のコンディションなどに対する説明不足が最も多く、決して偽物だからというわけではありません。

POWER WatchやLow BEATの総編集長を務める筆者自身、20年以上も日本の並行輸入市場に関わってきたこともあり、かなり興味があったため1時間を超えるインタビューとなってしまった。保護制度についての内容はもっと聞いたのだが、今回の記事では気になる部分に絞って紹介させていただいた(写真◎編集部・松本)

―――― この保護制度ですが、時計以外も含めてどこかのマーケットプレイスで実施しているところはありますか?

 私が知る範囲ではほかに存在しないと思います。もちろんeBayでは当然ないですね。ただ、eBayでは、9月からアメリカ国内だけを対象に純正品保証サービスを導入したということは聞いています。

―――― 優良な出店社にはTrusted Seller(トラスティドセーラー)として認定されているようですが、どのように決めているのですか?

 弊社の営業部には数十人の担当がいます。彼らは常に各国のディーラーとコミュニケーションをとりながら、対応状況や販売状況などを細かくチェックしています。そして、6カ月間に、ユーザーからの苦情はなく、販売状況も良い、そして対応も速いなど、総合的に判断して優良と認められたディーラーに対してTrusted Seller、つまり「信頼のおける販売業者」としてのバッチを付与しています。

―――― そもそも日本での展開は遅かったように感じますが、実際にいつからスタートしたのですか?

 実は10年前からサービス自体はすでに提供していました。ただ、ここ数年間、日本にフォーカスしてきたこともあり、ようやく有名な腕時計専門店も参加するようになったこともあり、現在では日本のディーラーの出店も数倍に増えています。おそらく100店舗ぐらいにはなっていると思います。

 それに伴い、日本ユーザーの利用も増えており、2019年8月から2020年7月までの1年間で比較すると、前年の4倍に取引額が増加しています。

―――― アプリのウォッチスキャナーについて質問します。私も自分の時計で試してみましたが、ちゃんと識別されたので驚きました。これはどのような仕組みなのかを教えてください。

 アプリは日本でも2012年から提供しています。全世界で550万、日本でも9月の時点で4万弱ダウンロードされています。これは、AIを駆使して現時点では1万8000本のモデルに対応しています。650万枚の写真をAIに登録し認知システムを構築しました。現在では日本でのスキャナーの使用件数は毎月3万回ほど使われています。

筆者自身の時計を使ってウォッチスキャナーを実際に試してみた。その結果がこの写真。名刺スキャンのような感じで写真を撮ると瞬時に対象モデルのサンプル画像と型番などのデータが表示され、そのデータが正しければ「はい」ボタンを押すと、市場価値(金額)が表示されるというものだ。ロレックス以外も試したがすべて正解したのには驚いた

―――― 最後に今後はどのような展開を考えているのか聞かせてください。

 長期的なゴールとしては、地球上のより多くの時計愛好家に知ってもらい利用してもらうこと。そして地球上にある高級時計のすべての情報を知ることが目的です。それらを目標にさらに増やしていきたいですね。

 10年後の目的としては、とにかくすべての時計の取引に関わりたい。例えば、価格相場の検索、または買った後にスキャンしてChrono24内のWatch Collectionに登録し、その価格の推移を見たり、または次に欲しいものを探したりと、時計愛好家のすべての欲求に対してChrono24がプラットフォームとして少しでもその役割を果たしていることが10年後の目的ですね。

(以上)

 さて、今回のインタビューをとおして感じたことは、高級時計の場合、高額であるため偽物やコンディションへの不安は購入者にとっては常に付きまとう。Chrono24の買い手保護制度は、まさしくそれがある程度払拭されるという意味では、時計愛好家にとってはかなり画期的なサービスであることは確かだ。

 そして、今回それ以上に筆者が驚いたことがある。それは30年ほど前から並行品や中古品に対する市場が確立されている日本において、それらの販売業者の出店が多いことだ。

 これに拍車をかけているのはおそらくはコロナ禍であろう。国内需要が減るだけでなく、近年業界に大きな売り上げをもたらしていたのは正直なところインバウンド需要だった。それが激減したことは大きく関係しているのではなかろうか。

 コロナの状況がいつまで続くのかわからないが、経済的な面からするとインバウンド需要が元に戻るのは当分先になることは予想される。そう考えると日本だけでなく、国外のユーザーもターゲットにできるというChrono24のプラットフォームは、日本の並行輸入ショップとしても、現状を鑑みればもはや無視できないのではないか。その意味でも今後の動向が注目される。

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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