意外と知らない時計知識

【Q82】1940年代の軍用時計でよく見る、12時位置の矢印はなにか?<ミリタリーウオッチ編>

A.イギリス政府所有の官給品であることを示す“ブロードアロー”というマーク

 世界史上最大の領土を誇り、かつては大英帝国として絶大な権力を誇っていたイギリス。
 第2次世界大戦時には軍用時計は急速に需要を増したが、アメリカやドイツをはじめとする国々とイギリスとでは、そもそも国の規模が異なっていた。
 そのため必要とされる軍用時計の数量も、各国とは段違いとなり、数多くの軍用時計が投入された。

 しかし、第2次世界大戦時の時計産業の中心はスイスであり、圧倒的な需要を賄えるほどの軍用時計を製造できるメーカーが国内になかったイギリスは、スイスの様々な時計メーカーが製造する軍用時計を輸入することで、対応をしていたのだ。

12時位置の下にある矢印のマークがブロードアロー。ひと目でイギリス軍官給品であることがわかる目印として使われた

 こうした当時の事情が背景にあったため、イギリスの軍用時計は実に多彩だった。
 そのためこれら多くの軍用時計の管理も重要となっていく。つまりそのひとつが、今回取り上げた“ブロードアロー”なのである。

 ブロードアローは三つ又槍を原型とした、イギリス政府所有の官給品であることを示すシンボルマーク。
 17世紀末から使われていたと言われている。

 ほかにも管理コードや管理ナンバー、支給年号や陸・海・空軍が個体を特定するためのシリアルナンバーの刻印などで管理していたが、それはまた別の機会でお届けしていく。

 

<参考文献>
今井今朝春『新・軍用時計物語』(グリーンアロー社、1998年)

 

文◎松本由紀(編集部)

 

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