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価格をとるか、雰囲気か? サブマリーナー、Ref.5513の悩ましき選択|ロレックス通信 No.150

 2019年4月から毎週日曜日に1度も休まず連載をしてきて早3年と3カ月。当ロレックス通信もおかげさまで150回を迎えた。それにしてもかれこれ25年以上もロレックス市場を見ているが、ここ3〜4年でロレックスを取り巻く環境はずいぶんと変わり果てたものである。

 さて、そんな節目の今回、前々回お届けしたアンティークのエクスプローラー同様に筆者が好きな、サブマリーナー第3世代の4桁レファレンス、Ref.5513について取り上げる。こちらもエクスプローラーのRef.1016と同様に現在の相場自体は、そうたやすく手の届くレベルにはないが、アンティークロレックスらしさが味わえて、日常でも安心して使えるためビギナーにもおすすめしたいレファレンスだ。

 サブマリーナーノ第3世代には、精度検定を受けたクロノメーター仕様(Cal.1560で後に1570)のRef.5512も併売されていた。それに対して5513はクロノメーター認定を受けていない自動巻きムーヴメント、Cal.1530(後にCal.1520)が採用された、いわば普及機として1962年から80年代後半までの約27年間も製造された。サブマリーナーを代表するロングセラーなのである。

サブマリーナーの第3世代のRef.5513。この個体はその後期にあたる1985年ごろから88年頃(89年とも)まで生産された通称ラッカーダイアルタイプ。インデックスにはメタルのフチ取りが施されている

 そのため比較的に市場に流通している数も多く見つけやすい。その反面、ロングセラーゆえに複雑で悩ましい点もある。それは途中でマイナーチェンジが何度か行われており、現在はそのちょっとした仕様違いで同じ5513でも市場価格が大きく違ってくるからだ。そのため5513を狙う場合は、違いについて予め把握しておく必要がある。

 今回、細かい仕様違いについてはとても複雑なため割愛させていただくが、5513を狙ううえでまず知っておいてもらいたい大まかなポイントを紹介する。それは文字盤の仕上げだ。実は仕上げ方法の違いで三つに大別できるのだ。しかもこれが実勢価格に大きく影響するため、ここではこの点について解説させていただく。

 5513の文字盤は製造時期によって仕上げ方法が大まかに3回変更されており、愛好家の間ではそれぞれミラーダイアル、マットダイアル、そしてラッカーダイアルと呼んで区別している。ミラーダイアル(ギルドダイアルとも呼ばれる)とは、黒文字盤の表面が鏡のような光沢感がある仕上げで、1962年から67年(66年とも)頃までの生産初期に採用されていた。そのためレア度は非常に高く、高額となるためどちらかというとコレクターズアイテム。初心者が購入するにはハードルが高いためおすすめしない。

上がRef.5513の中期までの仕様であるマット文字盤。下が同じ5513の後期の仕様であるラッカー文字盤だ。個々のインデックスの周りをメタルでフチ取りされた下の写真の個体と上の個体を見比べると、たかがメタルのフチとはいえかなり雰囲気が違ってくる

 次に登場する艶のないマットダイアルは、85年頃までの約18年間と5513の中でいちばん長く製造されており、人気はいまでも最も高い。ただ先に触れたように製造期間が長いため同じマットダイアルでも何度か書体や防水表示、インデックスなど微妙にマイナーチェンジされており、それに伴う仕様違いについて大きく五つのレアポイントに分類され、マーク1からマーク5と呼んで区別されている。このレア度によって、現在の実勢価格は180万円台から200万円台後半までと大きく変わるのだ。そのためマットダイアルを狙うのであれば最低限この点の予備知識は必須だ。

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