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【アンティーク時計の隠れた逸品教えます!】ルクルトが生み出したリザーブ付きモデルのパイオニア的存在

 ジャガー・ルクルトが自動巻きムーヴメントの開発に着手したのは、1940年代後半と比較的後発であった。同社が自動巻き1号機となるCal.476を完成させたのは47年。当時、すでに全回転式ローターが一般的になりつつあったなか、同社ではあえて半回転(ハーフローター)式を選んだ。理由は、複雑な構造をもたないゆえに生産性が高かったためだろう。エボーシュメーカーでもあった同社ならば生産性を重視した点にも納得できる。
 さらに翌48年には476の発展形として、ゼンマイの残量を確認できるインジケーターを文字盤側に備えた481を発表。これが後に同社を代表するモデルとなった“インヂケーター”に搭載されたキャリバーである。パワーリザーブ表示自体は懐中時計時代からすでにあった機能だが、当時、腕時計に採用しているメーカーは多くなかった。というのも、手巻き時計の場合、毎朝、ゼンマイを巻き上げることを欠かさなければ、時計が止まる心配がほとんどなく、リザーブ表示の必要性が低かったためだ。
 対して“巻き上げ”という習慣を廃した自動巻き時計は、ゼンマイがほどけるタイミングが予測しづらく(加えていまほど巻き上げ効率も優秀ではなかった)、いつ止まってしまうのかわからないという不安が常にあった。そこで同社では、自動巻きムーヴメントにリザーブ表示を追加して、この不安を解決したというわけである。まだまだ自動巻き時計に対する理解も低かった当時、自動巻き時計の普及におけるインヂケーターの貢献度は大きかっただろう。

約40時間のパワーリザーブを備えるCal.481を搭載するパワーマチック・インヂケーター。12時位置のパワーリザーブ表示は残量が10時間以下になると、赤色の表示(10時間以上は白)となり、注意を促す

各社が自動巻きの設計を刷新し、全回転式に改めたなか、半回転ローター式を進化させ続けたのがジャガー・ルクルトだ。1948年発表のCal.481では、巻き上げはラチェット式の片方向巻き上げ。半回転の弱点ともされる巻き上げ効率の低さを補うため、強大なローターが与えられた。また巻き上げ時に伴うショックは、半回転式ならではである

 どちらかと言えば地味なデザインとタマ数の多いことが、このモデルの評価を低くしてきた。しかし搭載するCal.481は、地板や受けなど、高級機並みの仕上げが施されており、目の肥えた愛好家から高い評価を受けるムーヴメントである。また市場ではジャガー・ルクルト名の個体より、アメリカ向けに輸出されたルクルト名の個体のほうが比較的見つかりやすく、コンディションにもよるが30〜40万円台で買えるだろう。

 

 

文◎編集部/写真◎笠井 修

 

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