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【昭和&平成の隠れた名作:Vol.9】ダニエル・ロートの代表作スポーツ オートマチック

機械式時計が低迷するなかで生き残りをかけて独創的なモデルが生み出された1970年代、趣味性の高い機械式時計を求める愛好家の需要を受けて工芸品的な時計が復活した80年代、そして名門の復活と新興ブランドの誕生を背景にアイコンモデルを輩出した90年代。

今回は、高度な技術とデザイン性を両立し、独特の存在感を放った“ダニエル・ロート”。その代表作“スポーツ オートマティック”の魅力を再考していこう。


1970年代にクォーツの登場や人件費の高騰などにより衰退していったスイスの機械式時計産業。現在に連なるその復活劇は、80年代後半から見られる名門の復活とともに始まったとされている。当時、ブレゲ、ブランパンなどのブランドが休眠から復活を遂げて、後の機械式時計ブームの起爆剤となったのだが、こうした名門ブランドの復活劇は、投資家が資金を投入して、製造工場を設立すれば実現できるというものではなかった。

機械式時計の価値、名門ブランドのステイタス性を改めて知らしめるためには伝統的な技法を駆使して作られる質の高い時計が必要であり、それを実現する時計師の存在が不可欠だったのだ。ブレゲの再興に携わり、現存するブレゲ作の懐中時計からトゥールビヨンの構造を解析し、それを腕時計サイズに設計したことで知られるダニエル・ロートもそんな時計師のひとり。

名門の復活を支えた時計師は、独立後にシグネチャーブランドを立ち上げる例がいくつも見られるが、彼も自身の名前を冠したダニエル・ロートを89年に創設。ポストヴィンテージの時代には、ダニエル・ロートとして、独創的な時計をいくつも生み出している。


■Ref.T157 STSB。SS(30mmサイズ)。日常生活防水。自動巻き(Cal.1211)。参考商品

DANIEL ROTH(ダニエル・ロート)
スポーツ オートマチック ミディアム
ダブルオーバルケースと呼ばれる独自のケースに加え、ブレスレットのデザインも特徴。横長のコマにダブルオーバルケースのフォルムが立体的に表現されている。

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今回クローズアップしたモデルは、コレクションとしてはスポーツラインに位置付けられているモデルなのだが、小振りなサイズ感とブレゲを彷彿とさせる高品質なハンドギョーシェダイアルがドレスウオッチに近いエレガントな雰囲気を備え、同時に代名詞といえる変形のダブルオーバルケースがほかのブランドにはない、唯一無二の個性を主張している。

ダブルオーバルケース、文字盤に加えて、独特なデザインに仕上げられたブレスレットもこのモデルの特徴のひとつ。ラグを持たないケース一体型の設計、横長のコマを組み合わせたデザインには、ノーチラス、ロイヤルオークなどの影響を感じるが、コマに二つの突起を配置することでユニークな印象が加えられている。文字盤とのバランスなど、賛否両論あるデザインだが、こうした作り手の主張を強く押し出したアクの強い意匠も、ポストヴィンテージならではの魅力。マーケティングが過度に重視される現在では、なかなかお目にかかれない個性を主張している。


 

文◎Watch LIFE NEWS編集部

 

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