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【昭和&平成の隠れた名作:Vol.6】1990年代に一世を風靡した“パシャ”のグリッド仕様

機械式時計が低迷するなかで生き残りをかけて独創的なモデルが生み出された1970年代、趣味性の高い機械式時計を求める愛好家の需要を受けて工芸品的な時計が復活した80年代、そして名門の復活と新興ブランドの誕生を背景にアイコンモデルを輩出した90年代。

この時代の時計には単なる“中古時計”という評価の枠では収まりきらない、アイコニックな意匠を備えた名作を見つけることができる。第6回に取り上げるのは、1990年代に一世を風靡した“パシャ”の派生モデル、パシャ38グリッド。独特の色気を備えた名作の魅力を改めて解説していく。


1980年代の後半を境に、90年代から2000年にかけて大きな潮流となった本格機械式時計ブーム。80年代に機械式時計復活のきっかけとなったのは、休眠状態となっていた老舗ブランドの復活と再評価であったが、幅広いユーザーを獲得した90年代以降は、時計専業ではない異業種ブランドも時計市場の拡大を担う大きな役割を果たした。

当時はカルティエとブルガリの2強時代であったが、なかでもカルティエは、フレデリック・ピゲをはじめとする名門の協力を得て特別仕様のムーヴメントを搭載するなど、意匠と機械の両面でワンランク上のクオリティを実現し、時計好きからも高い支持を集めた。ポストヴィンテージ時代に人気を集めたモデルといえばやはり“パシャ”こと、パシャドゥカルティエシリーズだろう。

一般的には30年代にマラケシュ(モロッコの旧帝都)の太守から要望を受けて製作された防水時計が原点とされているが、カルティエの公式ページでは43年に製作された防水時計が直接の原型とされており、パシャ自体の初出は85年。防水性を高めたラウンドケース、ミニチェーンでケースに固定されたネジ込み式リューズプロテクターなど、ベースとなる意匠、コンセプトを43年の防水時計から継承し、さらにビス留めされた独特なラグ、格子状のグリッドなどにより、エレガントさと男性的な雰囲気を兼ね備えたスタイリングが特徴だ。

■YG(38mm径)。自動巻き。参考商品

CARTIER(カルティエ)
パシャ38グリッド
取り外しが可能なフラットグリッドを備えた前期仕様のパシャ38グリッド。ローマインデックスと剣型針を備えた古典的な文字盤の意匠とフラットグリッドの組み合わせにより、上品でありつつ、男性的な存在感を主張する。

【パシャ38グリッドのディテールをもっと見る】

85年の発売以降、メンズラインの基幹コレクションとして多彩なラインナップを展開しているのだが、このパシャ38グリッドは、90年代後半から2004年まで発売された派生モデルのひとつ。風防を破損から守る取り外し可能な格子状グリッドを備えており、ジュエラーであるカルティエらしい装飾的で完成度の高い意匠が生産終了後も根強い人気を獲得している。


前期と後期で仕様が異なり、90年代後に登場した前期モデルはフラットグリッド、2003年頃からドーム型のグリッドを搭載しているのも特徴。このモデルは90年代の後半で使用が中止しているトリチウム夜光をインデックスと針に採用しており、グリッドとともに前期の仕様であることがわかる。飴色に焼けたトリチウム夜光、ブルースチールの剣型針など、ヴィンテージ感を醸す佇まいがポストヴィンテージならではの魅力を感じさせる。


 

文◎Watch LIFE NEWS編集部

 

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