1970年代に時計好きの間で熱狂的な支持を集める個性派時計を製造し、70年代後半に倒産したスイスの時計ブランド“AMIDA(アミダ)”が、名作時計“デジトレンド”と共にカムバックする。
1976年のバーゼルワールドで、アミダがデジトレンドを発表してから約半世紀が経過している。当時、スポーツカーのデザインにインスパイアされた未来的なラインを持つこの時計は、機械式ムーヴメントと回転ディスクによるデジタル風の自国表示を組み合わせた独創的な時計だった。
アミダは1925年 ジョセフ・ツヴァレンにより、スイス中央部のグレンヘンに設立。 設立当初から現代性を取り入れたコレクションを展開し、常に進化を続けていた。 ジャンピングアワー 製品に特化し、70年11月にジャンピングアワー・ディスクとトレーリング・ミニッツ・ディスクの特許を申請。73年4月には、LRD(光反射ディスプレイ)の特許を出願している。
1970年代、世界が新しい時代に足を踏み入れ、近代に向かって飛躍していた時代、創造性に溢れた変革の時代であり、科学技術が極めて重要な進化を遂げ、数え切れないほどの革新がもたらされた時代であった。76年のバーゼルフェアで、アミダは史上初の機械式デジタル表示のキャスケッド時計“デジトレンド”を発表し、大きなセンセーションを巻き起こした。クリスタルの下に回転ディスクによる機械式デジタル表示を備え、スポーツカーや宇宙船のダッシュボードを彷彿とさせるディスプレイスクリーンが搭載されていたのだ。
アミダ・デジトレンドは当時、完璧にマッチしたタイムピースであり、瞬く間に成功を収めるも、79年にアミダは倒産。この象徴的なデジトレンドは多くの独立系ウォッチメーカーにインスピレーションを与え続けることとなった。
【画像】独自開発のムーヴメントやUFOを思わせる時計のデザインに注目
アミダ創立50周年を前に、時計デザイナーのマチュー・アレグレとフランスの時計ブランド、デパンセルの創業者クレマン・メイニエの時計業界の若き起業家2人が、アミダのフラッグシップモデルを復刻することとなった。
今回は、アミダのリバイバルウォッチ、デジトレンドの“テイクオフ・エディション”を紹介する。
テイクオフ・エディション
2024年の未来へ…アミダ・デジトレンドは再構築され、洗練され、モダナイズされ完成された。316Lステンレススチールから削り出されたカーボディ・スタイルのケースが特徴となっており、輪郭は洗練され、美しい仕上げとなっている。再設計されたモデルは50m防水を備え、オープンバックからはスイス、ソプロド製のニュートン P092 機械式自動巻きムーヴメントを眺めることができる。
ケースサイズは 横39.6mm、縦36mm、厚さ15.6mm、重さ110g、九つの部品からなる独自のデュアルディスク構造を採用した自社開発モジュールと同じく自社開発されたジャンピングアワーディスクを搭載。 タイポグラフィは70年代を象徴するオレンジの数字を踏襲しながらもロゴはグラフィックデザイナー、ヨハン・テレッタズのデザインで刷新されている。しなやかなストラップは、オレンジのカーフスキンの裏地にチャコールのアルカンターラを使用、バックルはステンレススチール製だ。
デジトレンドは電子表示でも夜光表示でもない。ムーヴメントは水平に作動するが、鏡を使って時分ディスクのディスプレイは垂直に投影される。この仕組みを分かりやすく表現すると、潜水艦の潜望鏡がイメージしみゃすいかと思う。
これはアミダが LRD(ライト・リフレクティング・ディスプレイ)と呼ぶもので、アミダは73年に特許取得している。内部にプリズムを設置することで水平構造の時刻表示が縦に見えるように工夫されている。デジタル表示が注目を集めていった70年代ならではの、創意工夫を感じる仕組みと言えるだろう。
デジタルトレンド “テイクオフ・エディション”の販売価格は2900スイスフラン(日本円で約50万円)。2024年5月現在、プレオーダー受付中となっており、納期予定は2024年10月となっている。現代的なひねりを加えたヴィンテージ品とも言えるアミダ。気になる方は公式ウェブサイトをチェックしてみてはいかがだろうか。
》AMIDA(アミダ)
公式サイト
https://www.amida-watches.com
文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。
https://www.instagram.com/spherebranding/