アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ロレックス
GMTマスター
今回紹介するのはロレックスのGMTマスター Ref.1675だ。現在でも人気のスポーツモデルとして注目を集める同シリーズは多彩なバリエーションを揃えており、初代モデルから高級路線を意識した金無垢仕様が展開されていた。
GMTマスターが登場した1950年代当時、第2次世界大戦で培われた航空技術が民間へと下り、ジェット旅客機の運用が活発になっていく過程で、国際線パイロットのための腕時計が求められていた。ロレックスはこのようなニーズを予見していたかのような、世界24地域のタイムゾーンを表示できるワールドタイムモデルを発表していた。そしてこの実績もあってか、53年にはパン・アメリカン航空がロレックスにパイロット用腕時計の開発を依頼したのだ。こうして54年に発表、55年に発売されたのが初代GMTマスター、Ref.6542であった。

【写真の時計】ロレックス GMTマスター。Ref.1675。SS(40mm径)。自動巻き(Cal.1570)。1970年頃製。277万2000円/サテンドール
ここで取り上げるGMTマスターRef.1675は、セカンドモデルにあたり、シリアルナンバーから1970年ごろに製造された個体だと思われる。20年以上にわたり製造されたロングセラーモデルであるため、初代モデルに比べて現存個体が多く、仕様違いなどの選択肢が多いことも魅力のひとつだ。ブレスレットは、巻き込んだステンレス板をリベットで接合した構造が特徴的で、通称“リベットブレス”として愛好家の間で親しまれている。現行品に採用されている無垢ブレスレットと比べると、強度の面ではやや劣るものの、軽量で腕なじみの良い装着感が大きな魅力だ。
また、長年の使用や複数回にわたる研磨により、ケースが痩せてしまい、オリジナルの形状を保っていない個体も多い中で、この個体は比較的オリジナルに近いフォルムを維持している。なかにはヘアライン仕上げの薄れや、エッジのダレが見られる個体も少なくないため、外装の状態が気になる人は、購入前にしっかりと確認しておきたい。
そしてなにより、この個体で特徴的なのが、経年変化によって淡い色合いに退色したベゼルインサートだ。これは、アルマイト処理が施されたアルミ製ベゼルによく見られる変化で、近年では“フェードベゼル”とも呼ばれ、アンティークならではの風合いとして人気を集めている。現行のセラミックベゼルには見られない、独特の質感が大きな魅力だ。
ムーヴメントにはロレックスのなかでも名作と名高いCal.1570を搭載。精度と耐久性に優れた設計が特徴的で、ヒゲゼンマイに製造の難易度が高い巻き上げヒゲを採用するなど、精度の向上を目的とした設計を積極的に採用したキャリバーであった。
注意点として、ロレックスのムーヴメントは、油切れが起きても問題なく稼働してしまう場合が多いため、時間の進みや遅れ、自動巻きローターからの異音、リューズ操作の違和感を覚えた際には早期のメンテナンスをおすすめしたい。修理業者や時計販売店によれば、不動状態になってから持ち込まれた個体は深刻なパーツの損耗や破損を起こしている場合が多く、修理費用が高額になってしまうとのことであった。高額な修理を避けるためにも、時計の不調を感じた場合にはかかりつけの時計店に相談してみてほしい。
現行品のようなハードユースには向かないものの、GMTマスターは現在でも日常使用に十分耐えうるスペックを備えている。アンティークならではのフェードベゼルが控えめな雰囲気を演出し、ビジネスシーンからカジュアルシーンまで幅広く活躍する、デイリーユースに最適な1本だ。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎サテンドール