アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ティソ
シースター
今回紹介するのは、1960年代後半から70年代にかけて製造されたティソのシースターだ。
“ヒトデ”を意味する名を冠した同シリーズは、1952年に商標登録され、現在に至るまで同社のアイコン的モデルとしてその名が受け継がれている。現行モデルにおいては、300m以上もの防水性能を備えたダイバーズウオッチとして展開されているが、かつては日常生活防水を備えた実用時計として誕生したという歴史をもっている。オメガを例に挙げれば、防水時計として送り出されたシーマスターと似た立ち位置のモデルであったと考えても良いだろう。
同年代のオメガと比較すると廉価な価格帯であったため、ムーヴメントや外装の仕上げのクオリティは決して高いとは言えないが、実用性と耐久性を重視した堅実な設計が魅力的なシリーズだ。ケースにはステンレススチールを採用し、10角形の溝が刻まれたねじ込み式の裏ブタを用いることで、気密性を高めている。

【写真の時計】ティソ シースター。SS(34mm径)。自動巻き(Cal.784-2)。1960年代製。6万9800円。取り扱い店/WTIMES
ムーヴメントには、当時のティソに数多く採用された自動巻きのCal.784-2を搭載。本ムーヴメントは、1930〜60年代にかけて多種多様なキャリバーを生産した結果、生産性を低下させてしまったというティソの反省を踏まえて開発されたものだ。基本設計となるCal.781をベースに、手巻きや自動巻き、デイト表示など、さまざまな仕様に対応できる高い拡張性を備えた、合理的な設計が採用されている点が大きな特徴だ。
ティソの歴史をまとめた資料本『Tissot 150 Years of History 1853-2003』によれば、生産体制を見直してムーヴメントの種類を削減したことで、月産1万〜2万個であった生産数が、月産約10万個へと跳ね上がったとも言われている。
本個体に搭載されるCal.784-2は、非常にシンプルな本中3針の手巻きムーヴメントをベースに、スイッチングロッカー式に近い構造の、ロッキング・ギア(揺動歯車)方式の自動巻き機構を重ねた構造を採用している。やや古典的とも思える設計だが、非常に安定した性能を誇り、毎時1万8000振動のロービート機でありながら、実用的な精度を実現している。自動巻きの巻き上げ効率も申し分なく、しっかりと整備された個体であれば、1日中止まることなく安定して動作してくれるはずだ。
筆者自身も、同系統のムーヴメントであるCal.784-1を搭載したシースターを所有しているが、実用した際には非常に安定した性能を発揮しており、ムーヴメント設計の素性の良さを感じさせる。手巻きや針回しなど、リューズ操作の感触もしっかりとしているため、アンティークウオッチらしからぬ安定感が魅力的だ。加えて、同年代のティソのムーヴメントと共用部品が多いため、部品が破損した際にもドナー個体を探しやすいというメリットがある。
50〜70年代のティソは、外装、ムーヴメントともに総じて高い品質を備えており、十分なメンテナンスを施せば、いまなお活躍できる資質を持っている。
どうしてもブランドの地位や資産性の観点から、アンティークウオッチ店での取り扱いが少ないティソだが、しっかりとしたケースの作りや、安定したムーヴメントの性能には目を見張るものがある。ぜひシースターシリーズに限らず、ティソの時計にも注目してみてほしい。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎WTIMES
