先週の記事では、加速する“小ぶり×薄型”時計を軸に、業界を超えて広がるミニマリズム潮流について触れた。今週は、その対極にあり、1990年代後半〜2010年頃にかけて業界を席巻した“デカ厚”ブームを振り返りたい。
“時計は薄くて小ぶりこそエレガント”というかつての価値観を、わずか数年で180度覆したこのブームの正体とは何だったのか。その象徴的ブランドの人気コレクションの変遷から紐解いていく。
【画像全11枚】“デカ厚”ブームを牽引!あの名門ブランドの時計たち
●携帯電話の普及で変わった、腕時計の存在意義
80年代後半に誕生し、端末の買い取り制導入や小型化を経て90年代中盤より広く普及した携帯電話(ガラケー)。これによって腕時計が“時刻を知る”という実用的な役割から、装飾品・アクセサリーとしての役割へとシフトしていった。
なかでも高級時計は“自己主張のためのジュエリー”として、遠目からでもそれを着けていると分かるサイズ感・存在感のあるものが人気を博すこととなる。
●“デカ厚”ブランドの台頭、一大ブームに
“魅せる時計”への変容で、オーデマ ピゲのロイヤルオークやパテック フィリップのノーチラスといった、いわゆるラグジュアリースポーツ(ラグスポ)の流れも加速。また、異なる素材を組み合わせたウブロの“ビッグ・バン”が大ヒットし、派手でボリューミーなデザインが著名人やアスリートの間でトレンドとなっていった。
その潮流のなかで、“デカ厚”と呼ばれる一大ブームを象徴する存在となったブランドが、パネライ(PANERAI)である。

1998年に発売されたパネライの初代“ルミノール パワーリザーブ(PAM00027)”
もともとイタリア海軍向けのダイバーズウオッチや精密機器を製作しており、軍事機密に属するとして長らく民間向けの腕時計を手がけていなかったパネライだが、1993年についに市販化。96年に俳優のシルヴェスター・スタローンが映画内で着用したことで人気に火が付き、瞬く間にメジャーブランドの一角へと成長した。
軍向けに視認性を重視して作られていたこともあり、パネライの時計は当時の常識では考えられなかった44〜47mmという巨大なケースサイズであったが、その圧倒的な存在感と前述のスタローンの影響でタフで男らしいという新たなステータスが生まれ、以降のデカ厚ブームを牽引する存在となる。