アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ゾディアック
ロトグラフィック
今回紹介するのは、1950年代後半から60年代頃に製造されたゾディアックのロトグラフィックだ。
Roto(回転)とGraphic(描かれた)を組み合わせたモデル名には、当時まだ過渡期にあった“全回転式ローター”の自動巻きであることを主張するかのような意味合いが込められていたのではないだろうか。同時代のオメガ シーマスターやIWCを思わせる、スポーティなドレスウオッチらしい意匠のケースや文字盤のデザインも特徴的だ。
クサビ形のインデックスや、深く掘りこまれたパールドットのインデックスなど、50年代頃の時計ならではの凝った文字盤の作りにも注目したい。
十二星座を意味するゾディアックの名のとおり、裏ブタには十二星座のモチーフが刻まれており、文字盤側からは見られない遊び心が魅力的な1本である。

【写真の時計】ゾディアック ロトグラフィック。Ref.689。GF(35mm径)。自動巻き(Cal.AS1361N)。1950年代製。9万8000円。取り扱い店/WatchTender銀座
【画像:十二星座が刻まれた裏ブタやムーヴメントの状態を確認する(全6枚)】
ムーヴメントにはAS(アシールド)社のCal.AS1361Nを搭載。ムーヴメントの写真や技術資料を確認したところ、おそらくスイッチングロッカー式の自動巻き機構を採用しており、両方向巻き上げが可能な点が特徴だ。ローター芯の摩耗に注意する必要があるが、基本的な設計に無理のない、ロービートの耐久性に優れたムーヴメントだ。
加えて、同系列のムーヴメントであるCal.AS1382は、セイコーが国産初の自動巻きモデルであるセイコー インジケーター 11Aを製造する際にベースとしたムーヴメントとしても知られている。
ゾディアックと言えば、一般的には60年代後半にアメリカで発生した“ゾディアック事件”を思い浮かべる人もいるかもしれない。
ブランドにとってはイメージが低下しかねない事件の名前なのだが、さらに不幸なことに、自身のことを“ゾディアック”と名乗った犯人が、警察や新聞社に送りつけた犯行声明文の中に、“円の中に十字を描いたマーク”を自身のシンボルとして記していたのだ。
このマークは同社のロゴに酷似しており、犯人は当時人気を博していたゾディアックの時計を所有していた、あるいは広告などで目にした名前とロゴを借用した可能性が高いと言われている。
優れた時計を製造していたメーカーであった同社は、不運にもアメリカでは“事件に関連したブランド名”というイメージが先行してしまうという、何とも不遇な運命を辿ることとなった。
しかしながら、このミステリアスな背景が、皮肉にも一部のコレクターの間でカルト的なストーリー性を生み、今日ではアイコニックな存在として語り継がれている。
その一例として、デヴィッド・フィンチャー監督の映画『ゾディアック』(2007年)では、事件の最有力容疑者とされた人物が、ゾディアックのロゴとマークが入った腕時計(シーウルフ)を着用していたシーンが登場しており、ブランド名とロゴが犯人のアイデンティティと不可分であったことが示唆されている。
その影響からか、同社の代表作である“シーウルフ”は、ダイバーズウオッチ黎明期の傑作として、現在では日本円にして20万円前後、もしくはそれ以上の価格で取引されるほどの支持を集めている。
数奇な運命を辿りながらも、堅実な時計作りによって愛好家を魅了し続けてきたゾディアックに改めて注目だ。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎WatchTender銀座
