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【セイコー ゴールドフェザーとは?】ムーヴメント厚2.95mmを実現した1960年代の薄型ドレスウオッチ

アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。


セイコー
ゴールドフェザー

今回取り上げるのは、1960年代初頭に亀戸に工場を構える第二精工舎によって製造された、セイコー ゴールドフェザーだ。

日本語に直訳すると、“黄金の羽根”という意味のゴールドフェザー。羽根のように薄く、軽やかな装着感を求めて開発された薄型ドレスウオッチである。

現在では、クレドールからゴールドフェザーの名を冠したモデルが発売されているが、今回取り上げるモデルは、その元祖に当たるものだ。現行モデルでは、亀戸精工舎が手掛けた2針の薄型手巻きムーヴメントの傑作、Cal.68系の後継機が搭載されているが、元祖ゴールドフェザーでは中3針(センターセコンド)の専用ムーヴメント、Cal.60が搭載されている。

本個体はゴールドフェザーの中でも、ケースに18金を採用した高級モデルだ。実際に、1964年頃の時点で、ステンレススチール製や金張りのケースが9000~1万2000円であったのに対し、金無垢モデルはその約3倍である2万8000~3万3000円であったとされている。

繊細なカットの施された植字のバーインデックスやサンレイ文字盤、優雅な筆記体ロゴやベゼルやケース側面を細く絞ったケースなど、エレガントさと薄さを強調した繊細なデザインに仕上げられている。ただし、防水性は皆無であるため、水気や湿気に晒さないような環境で使用することを推奨する。

18金無垢のケースには目立ったダメージは見られないが、文字盤は外周部分に湿気などによる変色が生じているため、コンディションにこだわる人は要チェックだ。

【写真の時計】セイコー ゴールドフェザー。K18YG(35mm径)。手巻き。1960年代製。36万3000円。取り扱い店/時計の玄人

【画像:薄型の18金製のケースや文字盤の状態を様々な角度から見る(全6枚)

薄型腕時計は当時の流行であると同時に、各メーカーの技術力を示す舞台でもあった。実際、58年にはシチズンからムーヴメント厚3.65mmを実現した“デラックス”が登場し、日本一薄い時計として好調な販売を記録したとされる。セイコーもこれに対抗する形で、ゴールドフェザーの開発を進めたと考えられる。

そして、60年からムーヴメント厚2.95mmを実現したゴールドフェザーの製造が開始される。諏訪精工舎が手掛けた薄型モデルの“ライナー”などでは、従来のムーヴメントのパーツを薄型化するアプローチをとっていたが、ゴールドフェザーでは歯車などの輪列レイアウトを見直し、完全新規でムーヴメントを設計することで薄型化を実現していたのだ。

その具体例として、ムーヴメント中心からオフセットされた2番車が挙げられる。通常、2番車はムーヴメント中心に配置され分針を駆動するが、センターセコンドの構造では4番車(秒針)と重なり、厚みが増してしまう。この2番車を中心からずらし、4番車と重ならないよう配置することで、ムーヴメントの薄型化を実現している。

しかし、他社製品では、オフセットさせた2番車に文字盤側の分針へ動力を伝達する歯車が存在するが、本作ではそういった機構が存在しない。ではどうしていたのかと言えば、分針として稼働する歯車のついた筒である“分カナ”をムーヴメント中心に取り付け、オフセットさせた2番車と同時に1番車(香箱車)に噛み合うようにしていたのだ。このように、動力伝達の役割と時刻表示の役割を分散させることで、2番車と4番車の重なりを回避し、ムーヴメントの薄型化に成功したのだ。

もっとも、この設計には弱点もあり、ゼンマイのトルクが分針の軸となる分カナにかからないため、歯車の遊び(バックラッシュ)の分だけ、分針がふらつく状態となってしまう。そこで、この分カナに中心コハゼと呼ばれるバネのついた部品を押し当てることでバックラッシュを抑制し、分針のふらつきを軽減していたのだ。この機構がなければ、針合わせの際に簡単に針が動いてしまい、リューズを押し込んだ際に分針がズレてしまったり、時刻を合わせてもバックラッシュによって動力の伝達に遅れが生じ、針がすぐに動かずに時間がずれてしまったりする。こういった不具合を軽減する工夫からも、亀戸精工舎の技術者の熱意を感じさせる。

薄いケースや装飾性に注目されがちなゴールドフェザーだが、その内部に収められたムーヴメントには、当時の技術者たちの努力と創意が凝縮されている。繊細で取り扱いには注意を要するものの、国産時計の魅力が詰まった一本として、ぜひ注目したいモデルである。

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文◎LowBEAT編集部/画像◎時計の玄人

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