アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ホイヤー
カリキュレーター
今回紹介するのは、文字盤と完全に分離された回転計算尺が特徴のホイヤーのカリキュレーターだ。独特なデザインの回転計算尺付き回転ベゼルを備えたケースは45mm径ほどで、アンティークウオッチとしてはかなり大型の部類に入る。しかし、文字盤自体はそこまで大きくないため、数値ほどの大きさは感じないだろう。ネイビー文字盤にオレンジを配色することで、複雑になりがちなクロノグラフの視認性を向上させると同時に、70年代のスペースエイジを感じさせる優れたデザインだ。

【写真の時計】ホイヤー カリキュレーター。Ref.110.633。SS(45mmサイズ)。自動巻き(Cal.12)。1970年代製。53万8000円。取り扱い店/ジャックロード
ムーヴメントは、1969年の同時期に3社から発表された、世界初の自動巻きクロノグラフのひとつに数えられる“クロノマチック”であり、毎時1万9800振動であった振動数を毎時2万1600振動にアップすることで精度の向上に成功した第2世代のCal.12を搭載している。
“クロノマチック”のCal.11とその後継機Cal.12はホイヤーを中心として、レオニダスやブライトリング、マイクロローター式の自動巻きを得意としたビューレンとその親会社にあたるハミルトン、クロノグラフ機構を得意としたデュボア・デプラの各社が協力して開発・製造を行ったとされている。マイクロローター式自動巻きのベースの上に、クロノグラフのモジュールを被せる構造を採用しており、厚みのあるムーヴメントであった。動力伝達とクロノグラフの制御方式には、現代でもETA7750が採用するスイングピニオン式とカム式が採用されている。ムーヴメントはかなり分厚く、プッシャーもリューズとは逆方向に配さるなど、試行錯誤を繰り返しながら誕生したことがうかがえる。
だが、初期型ゆえのプロトタイプらしさは、アンティークでしか味わえないだろう。構造的に巻き上げ効率が低いことや、厚みが出てしまう欠点があったものの、後の自動巻きクロノグラフにも影響を与えたこのムーヴメントは、名作と呼ぶにふさわしい逸品と言える。
小振りなものが多いアンティークウオッチでも大型のケース、いわゆる“デカ厚時計”を選びたいという人にとっては、自動巻きクロノグラフは見逃せない選択肢だ。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎ジャックロード