【OUTLINEのアウトライン|no.2】 リベットブレス開発で突きつけられた現実とは…。

 先週からスタートしたアウトラインの連載コラム。前回は12月に発売したムーンフェイズクロノグラフのデザインで苦労させられた点について書いたが、今回はリベットブレス開発について取り上げる。

 オリジナルのリベットブレスを作ろうとした背景には、木下ほうかさんとのコラボモデル“パートナー I ”をより雰囲気のあるものにしたいという思いからだった。ただ、ステンレスの無垢で作られたブレスレットが一般的な現代において、こんなパーツが多くて面倒なものを作ってくれるところが果たしてあるのかというのが最初の壁だった。

 案の定3社に声をかけて見たものの2社からは「できない」と即答。そのうちの1社(ベルトメーカーのバンビ社)だけは「なんとかやってみます」と受けてくれたのだった。しかしながらそこで新たな問題が浮上する。それは最低生産ロットの数が何と4桁。たとえそれ以下の本数であってもトータルの製造コストは同じだと言うのである。

真ん中にあるパーツが俗に“フィット菅”と呼ばれるパーツ。これをブレス側のエンドピース(バネ棒を通す突起部分)に装着することで見た目にも違和感なくブレスを装着できるというもの。オリジナル・リベットブレスには2種類のラグ幅に対応できるよう20mm(写真)と18mmタイプが付属する。

 パートナー I の製造本数は300本。つまりはその本数に合わせてブレスの製造数を300本にすると、単純な話しが1本当たりの単価が数倍になるという計算。これでは時計自体の定価がかなり跳ね上がってしまうことになる。

 結局のところ定価を抑えるためには最低生産ロット分を作らざるを得なかったというわけである。そして300本はパートナー I で使うとして、残りをどうするのか。

 当初からせっかくなので1960〜80年代のサブマリーナー、Ref.5512や5513に合わせても雰囲気を壊さないよう、ブレス自体のテイストにもかなりこだわって作ってはいたものの、そんな悠長なことは言ってはいられなくなり、さらに汎用性を広げる必要性に迫られたのである。

 そのためにはケースのラグ幅さえ合えばどんな時計にも付けられるようにすることがいちばん。それにはフィット菅というパーツを付属させれば簡単に対応できるようになるのだが、バネ棒を通すブレスレット側のエンドピースの設計を変更しなければならない。ロレックスの当時のリベットブレスにこだわって作っていたこともあって、木下ほうかさんにもそこは了解を得て、フィット管用に設計を変更したのだった。

20mmタイプのフィット管を使い、アウトラインのコンプレダイバー1960にリベットブレスを装着するとこんな感じ。純正で付いているヴィンテージ調の革ベルトとはまたイメージがガラリと変わり、また違った雰囲気が楽しめる。リベットブレスレットは2万4200円。コンプレダイバー1960:4万9500円

 アウトライン・リベットブレスは、一般的なラグの形状でしかもその幅が20mmか18mmであれば、上の写真のようにどんな時計であっても、このリベットブレスを付けて楽しむことができる。特にスポーツ系モデルにはよく似合うため、ぜひ試してみていただきたい。

アウトライン公式WEBサイト

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。