【国産機械式腕時計に新たな選択肢】シチズンが11年ぶりに機械式ムーヴメントを開発

 本日2021年3月4日、シチズンから2021年の新作第1弾が発表されたので紹介したいと思う。
 今回、シチズンは11年ぶりとなる機械式ムーヴメントCal.0200を完成させ、これを搭載するモデルを“ザ・シチズン”のラインナップに迎え入れた。

2010年以来となる新型機械式ムーヴメント

 まずはその肝となる新型ムーヴメントの特徴をざっくりと解説したい。
 開発にあたって同社が特にこだわったポイントは、“高い精度の長期持続性”と“審美性”だったという。
 最新のLIGA手法などを用いて部品精度を高めるなどした結果、精度はクロノメーター規格を超える日差−3〜+5秒を実現。さらに長期持続性を実現するため、緩急針を持たないフリースプラング方式のテンプが採用されたほか、パワーリザーブも約60時間と既存ムーヴメント(約42時間)より延長されている。ちなみにテンワもシチズン製というこだわりようだ。
 加えて厳しい⾃社規格検定も(完成品状態で6⽅向の姿勢、3温度で17⽇間の精度検定)実施しており、高い品質を保証している。

 もうひとつ特徴として挙げられるのがスモールセコンド仕様であるということだ。センターセコンドが主流となっている現代において、あえて古典的なスモールセコンドを選択した理由は、ムーヴメントの審美性にもこだわったためである。歯車の連なりをもっとも美しく見せるレイアウトとして行き着いたのが、1918年に完成したシチズン第1号機と同じスモールセコンド構造だったというわけである。加えて配列だけでなく、節目仕上げを施した受けやペラルージュ装飾を施した地板、幅の広い面取りなど仕上げも細部まで凝っており、高級機らしい外観が追求されている。こうした仕上げには傘下のラ・ジュー・ペレ社(スイス)の高度な装飾技術やノウハウが生かされており、日本とスイス両国の時計製造⽂化を背景にもつムーヴメントと言えるのだ。

 

高品質な仕上げが与えられた高級機械式腕時計
■Ref.NC0200-90E。ステンレススチールケース&ブレス。ケース径40mm、ケース厚10.9mm(設計値)。5気圧防水。自動巻き(Cal.0200)。60万5000円(2021年8月発売予定)

 そして、このCal.0200が搭載された第1弾モデルとして登場するのが“ザ・シチズン メカニカルモデル”である。
 ラグをもたないケースデザインは昨今トレンドとなっている“ラグスポ”を思わせるが、一方でエッジを立ててシャープさを強調し、インダストリアルプロダクトらしい雰囲気をまとった造形が特徴だ。ミラーとサテンの異なる仕上げを使い分けするのはほかのラグスポ同様だが、特にサテン仕上げを粗めに施すことで力強さがプラスされている。これに加え、電鋳⼿法によって砂地模様をあしらった文字盤も本作の個性を際立てており、文字盤表面の凹凸によって生み出される豊かな表情も魅力となっている。

近年のシチズンではクォーツモデルでも大きな針を採用するようになったが、トルクの強い機械式ムーヴメントを搭載した本作の針はいっそう太く立体的な造形となっており、高級感がある

バリエーションとして、サンレイパターンに塗膜研磨を施し光沢感と深みを兼ね備えたブルー文字盤仕様と、電鋳⼿法によってニュアンスのある質感を与えたホワイト文字盤仕様(数量限定)も展開される。
■(左)Ref.NC0200-81L。60万5000円(2021年8月発売予定)。(右)Ref.NC0200-06A。限定55本。82万5000円(2021年8月発売予定)

限定モデルのムーヴメントのローターには特別に22金が用いられている

 価格はブレス仕様のレギュラーモデルで税込60万5000円、限定のホワイト文字盤仕様が82万5000円となる。既存の機械式モデルに比べて価格はぐっと上がっているが、内容を考えれば決して高くはないのではないか。しかも、「MY CITIZEN シチズンオーナーズクラブ」に登録すれば保証期間5年というのもうれしい。
 発売は少し先の8月を予定しているが、国産高級腕時計の新たな選択肢として加えてほしい1本である。

 

文◎堀内大輔(編集部)

 

【問い合わせ先】
シチズンお客様時計相談室 TEL. 0120-78-4807
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