夏はやっぱりコイツが似合う! ヨットマスター40|【ロレックス】通信 No.104

 先週配信したNo.103でも触れたが、ヨットマスター40がこの1カ月間で20万円以上と急激に高騰している。理由はわからないが、とにかくモノがないらしい。そんなこともあっていろいろと調べていたら、ヨットマスターについてはNo.062でボーイズサイズを取り上げたものの、メンズのヨットマスターは一度も取り上げていなかったことに気がついた。そこで今回と次回の2回に分けて40mmのメンズモデルについて取り上げたいと思う。そして、今回は現行のヨットマスター40について紹介する。

 まずは簡単に歴史からおさらいすると、ヨットマスターは、その名のとおりヨットオーナー向けのラグジュアリーなマリンウオッチとして1990年に登場した。そのためベゼルは逆回転防止ではなく双方向回転式(勘違いしている人は意外に多い)、加えて100m防水と、サブマリーナーのような本格的なダイバーズウオッチの仕様にはなっていない。

ヨットマスター人気の火付け役となったヨットマスターロレジウム

 また、当初のラインナップは金無垢のほかロレゾール(イエローゴールドとステンレスとのコンビ)のみというラグジュアリー仕様だったため、見た目の派手さを敬遠しがちな日本人に当初は不人気だった。

 そんなヨットマスターを一躍人気モデルに押し上げたのが、99年に登場したステンレススチールケースをベースにプラチナ合金(=ロレジウム)をベゼルと文字盤に使用したヨットマスターロレジウム、Ref.16622だったのである(これについては次回取り上げるためここでは割愛)。

 その後2012年のリニューアルに伴い型番がRef.116622に変更。同時に文字盤だけをブルーに変更したバリエーションが追加された。しかし、16年になるとダークロジウム文字盤(Ref.126622)が新たに投入され、それと入れ替わるかたちでロレジウムは生産終了となってしまったのだ。

2016年に登場したダークロジウム文字盤。重厚な輝きを放つ文字盤にターコイズブルーのモデル名と秒針が映える

 さて、このヨットマスター40のダークロジウム文字盤だが、実は発表当初の公式プレス資料にはボーイズタイプしか載っていなかったため、その後実際に流通するまではあまり注目されていなかった、というよりもその存在自体がほとんど知られていなかったと言ったほうが正しい。スポロレとしては意外なデビューを飾ったのだった。

 ちなみにロジウムとは貴金属の一種で、価格はプラチナや金よりも高額。塊の状態では非常に堅いため、プラチナや金などのように型を形成することができないらしい。そのためメッキやコーティングなどの素材として使われることが多い。

夏に映えるヨットマスター40。だがこのプラチナベゼルはキズが付いて交換となると30万円ほどの費用がかかるとも言われる。よってタフな使い方は避けたい

 ヨットマスターに採用されているのは、ダークロジウムと呼ばれるように少し暗めで落ち着いた色合いのため独特の重厚な輝きを放つ。そのためプラチナベゼル特有の輝きとあいまって、独特の存在感を感じさせる。

 さらにこの文字盤だけに採用されている秒針と品名ロゴのターコイズブルーがセンス良く、それがまた夏らしくてカッコイイのだ。 ただ残念なことに、現在の実勢価格は126万5000円の国内定価に対して200万円前後と高騰。さらにハードルが上がってしまった。

右のダークロジウムは200万円前後。対して左のブルーは160万円台と実勢価格には30万円以上の価格差が生じている

 一方のブルー文字盤は、ブルーと言ってもネイビー。サブマリーナーデイトのブルー文字盤のような派手さはないためファッションの差し色としても悪くない。しかもダークロジウム文字盤よりも実勢価格は30万円前後も安い。実は驚くほどの価格差なのである。もしダークロジウムにこだわらないのであれば一考の価値はあるのではないだろうか。

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。