【待ってました!】久しぶりのレギュラー展開となるベーシックなルミノール クロノ

 時計界におけるビッグサイズのトレンドを牽引してきたパネライだが、ここしばらくはなぜかクロノグラフがレギュラーラインにラインナップされていなかった。しかもスペシャルモデルとして投入されるパネライのクロノグラフは、フライバックやレガッタカウントダウンなどの凝った機構のモデルが多く、それだけに価格帯も高く、シンプルなクロノグラフを求める声は以前から大きかった。2021年の新作としてリリースされたルミノール クロノは、ひさびさとなる待望のベーシックな新作クロノグラフコレクションだ。文字盤はブルー、ブラック、ホワイトの3色が用意されており、そのルックスからもかなり気合の入ったコレクションだと感じさせる。

ルミノール クロノ
■Ref.PAM01109。SS(44mmサイズ/15.65mm厚)。10気圧防水。自動巻き(Cal.P.9200)。110万円

 まず目を引くのは、エッジの大きく張り出した存在感たっぷりのルミノールのケースだ。リューズにはルミノールの特徴ともいえるリューズプロテクターが装備されているので、ただでさえ大きな突起がさらに強調されている。ケース3時方向はほぼリューズ関係で占められているため、クロノグラフのプッシュボタンは9時方向にまとめられている。少し変わったデザインではあるが、ケースと対比したときのボタン位置や大きさのバランスが良く、パネライらしいマッシヴさはきちんと表現されていると思う。

9時方向にプッシュボタンを備えるため、クロノグラフの操作性は高い

 文字盤はクロノグラフとしてはシンプルで、パッと見たときの視認性も良い。インデックスはスーパールミノバを使用しているので暗所でも見やすいが、凝っているのはこの文字盤がサンドイッチ構造になっている点だ。パネライの伝統的なサンドイッチ文字盤が、インデックスの視認性を高めると同時にデザイン的にも立体感を与えている。やはりフラットな文字盤よりも高級感があって盤面も締まって見える。さらにいえばインダイアルのブルー針も小さなパーツであるが、差し色として絶妙な効果を発揮している。ケースエッジの処理はやや甘めだがダレた感じはなく、ケースフォルムの美しさをうまく引き出している。全体にルックスはかなり高レベルだ。

 44mmとサイズは大きいが、パネライというブランドを考えれば驚くほどではないだろう。クロノグラフゆえ厚みも15mmを超えているが、むしろこれくらいのボリュームは時計のデザインを考えれば好ましい。防水性能も10気圧と、見た目どおりのタフさを備えている。搭載されているムーヴメントは毎時2万8800振動の新キャリバーP.9200で精度には申し分ないが、惜しむらくはパワーリザーブが42時間とやや短いこと。イマドキの実用時計としては60時間くらいは欲しいところだった。

 実用性の高さでは定評のあるパネライだけに、クロノグラフが定番コレクションに加わったことを歓迎するファンは多いだろう。今後ももっと力を入れていってほしいところだ。110万円という価格も現行の時計相場を考えるとかなり抑え目で、市場に強く打って出た戦略的な価格だと感じる。

 

【問い合わせ先】
オフィチーネ パネライ TEL.0120-18-7110
https://www.panerai.com

構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎笠井 修