【実機レビュー】何と文字盤をも自製するドイツの高級ブランド“グラスヒュッテ・オリジナル”。その限定モデルを着けてみた!

 ドイツ製高級腕時計の聖地とも称されるドイツ東部に位置しチェコとの国境近くにある小さな街“グラスヒュッテ”。人口2000人足らず、歩けば20〜30分で回り終わってしまうほどの小さな街にもかかわらず、名だたる高級時計メーカーが10社以上もが林立する。ドイツ時計産業の一大中心地なのである。

 そして、今回取り上げた“グラスヒュッテ・オリジナル”はその中でも代表的ブランドのひとつと言える存在だ。

 このグラスヒュッテ・オリジナルは、内外装のほとんどをドイツ国内でまかない高い自製率を誇る。ムーヴメントのパーツは、実に95%以上が自社製造だ。しかも、ドイツのシュヴァルツヴァルト地方(通称黒い森)の北玄関口にある街“フォルツハイム”に文字盤を専門に製造する工場をもち、文字盤までも自製している数少ないブランドのひとつでもある。ムーヴメントを自社製造するブランドは工作機器や技術の進歩によってかなり増えてきたが、文字盤まで自社で作るブランドとなると極めて少ない。

取材時に見せてくれた文字盤のサンプル。分厚いファイルの中には整然と整理された実に様々なデザインがストックされていたのに驚かされた。しかもその分厚いファイルは何冊もある

 もう約6年前になるが2014年6月に筆者はフォルツハイムにある時計関連のサプライヤーを取材するために現地に赴き、この文字盤工場にも訪れている。最新の工作機械が数多く並んでおりまさに最先端の文字盤工場という感じだった。

 この工場だが、実は1922年に創業し29年から文字盤製造を開始したT.H.ミュラー社が前身だ。いわゆるもともとが歴史のあるれっきとした文字盤メーカーだったのだ。それを2012年にグラスヒュッテ・オリジナルが買収、以降は同社専門の文字盤工場となったわけである。

 取材時には、これまでに製造してきた様々な文字盤のサンプルを納めた分厚いファイル(写真)を見せてくれたのだが、それが何冊もありその膨大な量にはかなり驚かされた。いかに多くのブランドに対してこれまで文字盤を製造し供給してきたかがうかがい知れる。

 なお、この文字盤工場についてもっと知りたい方は、2014年に刊行した“ドイツ腕時計 No.2”に4ページわたって紹介している、そちらを見てほしい。

 さて、前置きが長くなったが、文字盤まで自製するグラスヒュッテ・オリジナルの、その文字盤のクオリティの高さを実感できる新作の限定モデルについて、今回実機をお借りできたので、実際の印象を簡単に紹介したい。

セブンティーズ・クロノグラフ・パノラマデイトの限定バージョンとしてリリースされたRef.1-37-02-05-02-55。グレーグラデーションの文字盤が独特の存在感を放つ

 これは、1960年代と70年代の二つの時代からインスパイアされたモデルを展開するヴィンテージコレクション。そのひとつ、70年代をコンセプトに掲げるセブンティーズラインの人気モデル、セブンティーズ・クロノグラフ・パノラマデイトのリミテッドエディションとしてリリースされたモデルだ。

 まずはセブンティーズ・クロノグラフ・パノラマデイトの特徴について触れると、見た目はクラシカルで落ち着いた雰囲気なのだが、実はかなりの多機能モデルなのである。瞬時にクロノグラフ秒針をゼロリセットできるフライバッククロノグラフ機構を備え、そのクロノグラフの積算計は、30分は3時位置で一般的なのだが、12時間は12時位置の小窓にアラビア数字で表示される。

 また、ちょっと見落としてしまいそうだが、パワーリザーブインジケーターを9時位置のスモールセコンド(秒針)のインダイアル内にさりげなく備えている点もおもしろい。要素が多くなると文字盤デザインが煩雑になるため、クラシカルな全体の雰囲気を壊さないようにと考えられていることがわかる。

 そして6時位置にあるのが、グラスヒッテ・オリジナルのシンボルとも言えるパノラマデイト。一の位と十の位の数字を別々のディスクで表示するよく言われるビッグデイトなのだが、それと異なる点がひとつある。それは同社の特許技術で、一の位と十の位の数字の間に本来あるはずの間仕切りがない点。そのため1体化して見えて判読性が高められているというものだ。

独特の濃淡表現は熟練した技術でこそ成せる技

【自然なグラデーション】このグラデーションのすごいところはある意味で濃淡の始まりが均一でないところ。この自然な感じはなかなかほかでは出せない味だ

ではこの限定モデルの何が特別かというと、うっとりするほど美しいこのグレーグラデーション文字盤にある。このグラデーション効果を出すために、まず最初に、回転する真鍮製ブラシでサンレイ仕上げを施し、文字盤にガルバニック仕上げをしてからグレーのラッカーを何度も塗布。最後にスプレーガンを使って様々な角度から入念にブラックのラッカーを吹き付け、一つひとつ独特の流れるようなカラーに仕上げている。その後、文字盤を窯で焼き付けして色を定着させるというものだ。

 限定本数は何と100本。この数から察するにいかに難しい作業かがうかがい知れる。まさに文字盤メーカーを傘下にもつ同社だからこそ成せる手の込んだ作りと言えそうだ。

実機を実際に着けてみた!

40mm径とケースサイズ自体はそれほど大きいというわけではないし、おまけにラグも短いためさらに着けた感じは悪くない

 そして、実際に実機を着けてみた。数字的にはそれほど大きいというサイズではないのだが、ベゼルが張り出しているためだろう、見た目にはサイズ以上に存在感があると感じた。

 また、着け心地については、スクエアケースにありがちな着け心地の悪さを、裏ブラを少し張り出して手首と接する面を少なくすることで緩和しているため決して悪くはない。ただ、裏ブタのその出っ張りでラグと手首との間に隙間ができてしまい若干の不安定さは否めないことも確かだ。そのため特に手首の細い人は、この限定モデルに限らずレギュラーモデルも含めて、実際に着けてみることをオススメする。

【ドイツらしい剛健な作り】一つひとつのパーツがしっかりと作られているのがわかる。コラムホイールの制御を直にみられるのはメカ好きにはたまらない

【機械を見せるための造形】ラウンドに比べて防水性を維持するのに難しいスクエアケース。裏ブタを厚めにして中の機械を見せると同時に100m防水を誇る

 ちなみにレギュラーモデルのブルー文字盤タイプがこちら。ほかにもシルバーとガルバニックグレー文字盤がラインナップしている。もちろんこのフライバッククロノグラフ仕様以外にも3針にパノラマデイトというシンプルなモデルもあるなどバリエーションも豊富だ。

グラスヒュッテ・オリジナル
セブンティーズ・クロノグラフ・パノラマデイト。Ref.1-37-02-05-02-55(限定モデル)、Ref.1-37-02-03-02-50(ブルー文字盤)。SS(40×40mmサイズ、厚さ13.50mm)。10気圧防水。自動巻き(Cal. 37-02/毎時2万8800振動/パワーリザーブ約70時間)。各158万4000円(※限定モデルは世界限定100本)。

文◎菊地吉正(編集部)/協力◎グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座 TEL.03-6254-7266

 

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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