アンティーク時計 話題のトピックス

【アンティーク購入指南3針編】オメガ、IWC、ロンジンなど - 第2回ゼロからわかるアンティークウオッチ

 アンティークウオッチの基本的なことを全5回にわたってお届けする連載企画。第1回ではそもそもアンティークウオッチとは何かをテーマにアンティークの基礎をおさらいしたが、今回の第2回から5回までは、四つのテーマに分けて、それぞれ具体的なおすすめアンティークウオッチとともに購入のポイントなどを紹介していきたいと思う。まずひとつ目のテーマとして今回は、ビギナーにもリスクが少ないベーシックな“3針モデル”について紹介する。

》シンプルだからこそごまかしがきかない

 時計の基本性能だけがものを言うシンプルな3針時計は、小細工が利かないだけに製造側の技術力が顕著に表れる。特に製造から半世紀以上経過したアンティークウオッチで、いまでもきちんと精度を出せて安定して使えるような個体は、それだけ製造当時の工程が優れていたことを意味している。3針のシンプルな文字盤もよく見ればインデックスのセッティングなどに細かな技法が施されており、枯れた風合いがよくマッチする。

 アンティークに組み込まれたロービートムーヴメントは、いまでもしっかりと動く質の高い傑作が多い。部品も鋼材から切り出した肉厚で耐久性の高いものが多く使われており、調整次第で現行製品並みの精度を叩き出す個体も少なくない。

 特に3針時計ともなるとムーヴメント自体の構造はシンプルゆえ、パーツのクオリティの高さがそれだけ際立ち、モデルによっては現行製品ではあり得ないような凝った仕上げが成されたものも散見される。

 ケースの気密性が落ちているだけに防水は期待できないとはいえ、ふだんの取り扱いに特別な注意は必要ないので、初心者が気軽にデイリーユースするには最適だろう。

ひとくちに3針といっても、そのスタイルは時代によって微妙に変わってくる。懐中時計から発展した初期の腕時計では、秒針を小さなインダイアルに配したスモールセコンドが中心だった。輪列の配置などが比較的簡単で設計しやすかったためで、現在のようなセンターセコンドが主流になってくるのは、第2次大戦以降のことだ。アンティークな味わいが強いのはやはりスモールセコンドのほうだろう。こうしたデザイン的な特徴を知っておくと、時計を見ただけで大体の製造時期を推察することができる

 さらに言えば、シンプルな3針時計の場合、アンティークの小さなサイズ感がいっそうに生きてくる。現行製品は、3針であっても40mmオーバーのケース径が主流になっているが、このサイズだと存在感が強すぎてトゥーマッチだという人は多い。

 アンティークだと35mm以下のモデルも多く、日本人の細い腕にも納まりがいい。スーツに合わせてビジネスの場で使っても、目立ちすぎないから重宝する。アンティーク専門店のスタッフに話を聞いても、このサイズ感を求めてアンティークに流れてくるユーザーはかなり多いとのことだ。デザイン的に無理がない個体が多いのもアンティークの大きな魅力と言えよう。

 

》30万円の予算で人気ブランドが手に入る

 アンティークはその製品の希少性だけでなく、価格的な魅力も大きい。手が込んだ個体が多い割に、特に3針時計となると驚くほどの手頃な価格で手に入ることも少なくないのだ。

 たとえば30万円の予算を用意したとしても、現行製品だと狙えるのはミドルレンジの時計で、ロレックスなどの人気ブランドとなると予算的にかなり厳しくなる。

 ところがアンティークを視点に入れると、オメガ、IWCといった高級ブランドも十分視野に入るのだ。ロレックスだとスポーツモデルこそプレミアム価格になっているが、1960〜70年代のオイスターパーペチュアルやデイトジャストあたりは市場でも流通量が多く、20万円台で質の良いものが手に入る。

 基本的な意匠を現在も踏襲するロレックスだけに見た目は現行品とさほど変わらず、またこの頃から自動巻きモデルが主流となっていることに加えて、なにより頑丈なのでいまでも十分実用になる。

 またこうした流通量が多い定番モデルであれば、部品が手に入らず修理できないということはまずないという点でも長く使ううえで安心だ。価格的にも性能的にも手を出しやすいレンジなので、初心者はこの辺から狙ってみたい。

 

》編集部のオススメ - 手巻き編
(左)オメガ シーマスター。YG(35mm径)。手巻き(Cal.285)。1960年代製。参考相場12万~24万円/参考商品
ゴールドケースにドーフィン針という組み合わせの極めてアンティーク感が高いシーマスター。落ち着いた味わいのあるルックスで、フォーマルな場で使っても恥ずかしくない気品に満ちている。搭載するのはオメガの名機Cal.285で信頼性も高い。

 オメガの名機Cal.285は当時の天文台コンクールで認可されていた最大サイズの30㎜径のムーヴメントで、いわゆる“30㎜キャリバー”として有名。チラネジなし、巻き上げヒゲという仕様で、大きめのテンプで精度をキープしている。Cal.285は30㎜キャリバーでも比較的後期のモデルで完成度が高く、市場でもリーズナブルな価格で見つけられる。

(右)ロンジン ラウンド。SS(29.7mm径)。手巻き(Cal.10.68Z)。1930年代製。参考相場17万~30万円/参考商品
小振りのケースは人気のステップベゼル、針はブルースチールという仕様がアンティークファンの心をそそる。発売当時の日本はまだ昭和初期で、相当高価な時計だったことは間違いない。文字盤の焼け具合も迫力満点。

 多くのパーツはきちんと金メッキをしており、穴石はシャトン留めを採用するなど、当時のロンジンのきめ細かな作業工程がうかがえる名キャリバー10.68Z。耐久性の高いパーツを使っており、装飾の美しさもあってアンティークファンには人気が高い。現在でも精度を出しやすい個体が多く、初心者にもオススメだ。

セイコー キングセイコー。SS(35.5mm径)。手巻き。1966年製。参考相場8万~20万円/参考商品
主に亀戸の第二精工舎で作られていたセイコーの高級ラインで、1960年代初頭から70年代中盤に製造された。諏訪精工舎のグランドセイコーと凌ぎを競った名機で、当時の価格は大卒初任給並みの高級品だった。クロノメーター級の精度を誇っていたことでも有名。

 

》編集部のオススメ - 自動巻き編
ロレックス オイスターパーペチュアル。Ref.1002。YG×SS(34mm径)。自動巻き。1965年製。参考相場20~40万円/参考商品
白文字盤にシンプルなバーインデックス、ゴールドとスチールのコンビ仕様で、どんなスタイルにも合わせやすい。スポーツモデルと違い価格もこなれており、とにかく壊れにくいので使い勝手がいい。1本持っていると重宝するだろう。

 

オメガ コンステレーション。YG×SS(34mm径)。自動巻き。1962年製。参考相場20~45万円/参考商品
アンティーク市場でも人気の高い12角ダイアルのコンステレーション。当時のオメガを代表するモデルだっただけに、全体的にハイグレードな仕上がりになっている。金無垢仕様ながら経年によって嫌らしさがない、適度な輝きに抑えられており日常でも使いやすい。

 

IWC オートマティック。SS(34mm径)。自動巻き。1960年代製。参考相場20~40万円/参考商品
ロゴが筆記体表記のアンティークIWCも、探し求める人が多いモデルだ。シンプルなノンデイトモデルだが、それだけに素地の良さが光る。文字盤のコンディションも良く、ビジネスシーンでも使えそうなアイテムだ。

 

 さて、次回はアンティークウオッチでも人気の高い“クロノグラフ”について紹介する。

 

構成◎松本由紀(編集部)/文◎巽英俊/写真◎笠井修

-アンティーク時計, 話題のトピックス