【ロレックス】通信 No.052|モデルチェンジ候補・第5弾|不思議な点も多い「エアキング」(前編)

 2020年の「モデルチェンジ候補」と題して3100系の自動巻きムーヴメントを搭載するモデルを順次紹介してきた本企画も、今回と次回の2回にわたって取り上げる“エアキング(Air-king)”でいよいよ最終となる。このエアキングだが、これまで取り上げてきた5種類の候補の中では、歴代モデルの系譜から考えるとかなり異色な存在であると同時に不思議な点も少なくない。

 現行のエアキング、Ref.116900が登場したのは2016年のこと。最初にこのエアキングを見たときは、正直「えっ、どうしたの?」と思ってしまったのは筆者だけではないだろう。それほどかなり個性的なデザインだったからである。

 というのも2014年に生産終了した旧エアキングといえば、下の写真左がそれだが、ケース径34mmと小振りで、ロレックスのエントリーモデル的な位置づけにあったベーシックなスタイルのコレクションだったからだ。

左は旧モデルのRef.114200。右は現在のエアキング

 それがいきなり写真右のように、これまでのスタンダードなシリーズとしてではなく、スポーツ系コレクション(ロレックスではプロフェッショナルウオッチというシリーズ)として6mmサイズアップの40mmケースに主張の強いデザインが与えられたからである。背景に何があったのかは知る由もないが、基本デザインを歴代モデルに受け継ぎつつ流れを大切しているロレックスにしてはかなり珍しいことだ。

 さて、この個性的なデザインだが発表された当初、ロレックス愛好家の間で大変話題になったことをご存じだろうか。それはロレックスが支援しているプロジェクトのひとつで、地上最速記録の樹立を目指して開発されたジェットエンジン搭載の超音速カー「ブラッドハウンドSSC」のコクピットに装備されているロレックス製クロノグラフがこのエアキングに酷似していたからだ。

ブラッドハウンドSSCのコクピットに装備されたロレックス製クロノグラフ

 いま一度旧型と現行を比較する写真を見てほしい。旧型の3、6、9時の3カ所に使われたアラビア数字インデックスをデザイン的に残しつつ、それ以外に採用された5〜55までの秒表示を大きくしたインデックスやロゴ、クラウンマークの配色など、まさにブラッドハウンドSSCのクロノグラフに使われているものとほぼ同じに見える。しかしながら、ロレックスの公式WEBサイトには、この関連性についてはひと言も触れられていない。ま、どうでもいいことかもしれないが、なんとも不思議なことのひとつである。

 また、このエアキングについてロレックスの公式サイトには「飛行史へのオマージュ」という言葉が使われている。つまり、インデックスに秒表示を採用した点からもパイロットウオッチを想定していることは明白だ。

 パイロットウオッチといえば、コクピットの計器類から発せられる磁気の影響を受けないようにすることが必須となる。そのためなのだろう、このエアキングには、ロレックスの耐磁時計として生まれた“ミルガウス”と同じCal.3131が採用された。つまり、耐磁性が強化されていることがわかる。

 さらにそのムーヴメント自体はミルガウスと同様に磁気シールドで保護されていることはしっかりとスペックに明記されているものの、不思議なことにどれだけの耐磁能力を有するのかは公式にはどこにも触れられていない。

 エアキングがパイロットウオッチを目指して開発されたとすれば、当然のごとく耐磁性能の情報は大きなアドバンテージとなるはずだ。それにもかかわらず開示しないのはなぜか。

 これについては、ロレックス唯一の耐磁時計として君臨してきたミルガウスのポジションが微妙に薄れてしまうからという見方や、ミルガウスを大きく超える耐磁能力をもつ時計が他ブランドからすでに出ていることもあり、あまり訴求力はないためなのではないかなどと言われている。ま、どちらもあながち大きく外れてないような気がするのだが、いかがだろう。

 さて、次回はエアキングを実際に購入する際のポイントについて触れたいと思う。

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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