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【日本未上陸、注目の時計ブランド“Tusenö(トゥセノー)”】実機レビュー

日本未上陸ブランドのなかから、編集部が注目したモデルを選んで実機レビューしていく不定期連載企画。今回、実機を取り寄せてクローズアップするのは、スウェーデン発の日本未上陸ブランドTusenö(トゥセノー)だ。

2023年の12月に公開した記事ですでに取り上げたブランドだが、同社のロングセラーモデル“シェルバック”の進化形モデルが完成したという連絡を受けて詳細を確認し、かなり魅力的なモデルであったため、再度実機レビューを行うこととなった。

時計を見ていく前に、改めてTusenö(トゥセノー)のストーリーを紹介しておこう。同社は2015年にスウェーデン第2の都市、ヨーテボリでヨハン・ホルズナーとアレクサンダー・ベンツによって設立された新進ブランドだ。ブランド名はスウェーデン西海岸を描いた古い海図“kusten med de tusen öarna(千の島々のある海岸の意味)”に由来し、時計のデザインとすべての作業はヨーテボリのオフィスで行われ、スイスで少量生産されている。


【実機レビューしたモデル:SHELLBACK V2 WHITE(シェルバック V2 ホワイト)】

SHELLBACK V2 WHITE(シェルバック V2 ホワイト)
シェルバックV2はTusenö(トゥセノー)のスポーツウオッチコレクションを代表するロングセラーモデル”シェルバック“をベースに製作された進化形モデルだ。基本デザインは逆回転防止ベゼルを備えたダイバーズウオッチのクラシックスタイルを受け継いでいるが、夜光塗料によって視認性を高めた針とインデックスや、堅牢な外装の造形で、トゥセノーの個性が明確に表現されている。

【SPEC】
■素材:ステンレススチール(サファイアクリスタル風防)
■ケース径:40mm、ラグの上下幅約47mm、厚さ約11.9mm
■防水性能:20気圧防水
■駆動方式:自動巻き(Sellita SW200)
■価格: 販売価格は649米ドル(約9万6000円)
※ホワイト、ブルー、ブラック、DLCの4色展開

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シェルバック V2は2024年夏の納品予定で予約注文を実施している。予約注文にはトロピックラバーベルトが付属するため、気になった人はブランド公式サイトをチェックしていただきたい。

Tusenö(トゥセノー)公式サイトへ


【注目ポイント:2層構造の文字盤】

本格ダイバーズウオッチのスペックを備えていることがシェルバックV2の特徴だが、個人的にいちばんの魅力だと感じたのは、独自性を備えたデザイン。なかでも目を引きつけられたのが文字盤だ。シェルバックから基本デザインを受け継ぎつつ、インデックスの周囲の輪郭をわずかに太くするなど、さらに実用性が強化されている。

スーパールミノバのベースプレートと、パンチングメタルを用いたトップレイヤーの2層構造を採用しており、大きめのラウンドインデックスをベースに、12時位置に2本、3時位置と9時位置に1本のバーインデックスを配置。丸みのあるインデックスのフォルム、インデックスを凹ませたことで生まれる陰影や奥行き感が、ダイバーズウオッチの定番デザインに個性を加えている。

また、6時位置にデイト表示を搭載しているのも本作の特徴だ。3時位置もしくは4時と5時の間にデイト表示を配置するのが一般的だが、6時位置にデイト表示を配置することで文字盤がシンメトリーのデザインとなる。視認性を確保しつつ、悪目立ちすることなく文字盤に溶け込むデザインとなっているのだ。デザインバランスを損なうという理由からデイト表示を好まない時計好きも多いが、本作にその心配はいらないだろう。スーパールミノバのベースプレートを縁取りのようにカットし、夜間や暗所でも日付けを確認できるようにデイト表示をクローズアップしているのも面白い。


【注目ポイント:飾りが付いた針】

奥行き感のある文字盤にアクセントを加えているのが先端までみっちりとスーパールミノバを塗布した時分針(秒針は先端のみ)だ。時針にはトゥセノーを象徴する円形の飾りを備え、シルバーのアウトラインが視認性を高めつつ、デザイン的なアクセントを加えている。視認性をしっかりと考慮して、時針がインデックス、分針と秒針が外周のミニッツレールに届くように仕上げられているのも好印象だ。

なお、この時針の円形の飾りは、運針に合わせて6時位置にある“SHELLBACK”の文字列をクローズアップする役割も備えている。スマイルマークの口もとを思わせる“SHELLBACK”のカーブしたレイアウトを含め、遊び心を感じるデザインを見て、筆者も思わずニヤリと微笑みを浮かべてしまった。

5分刻みのスケールを備えた逆回転防止ベゼルは、時計界で近年のトレンドとなっているソリッドなステンレススチール仕様(ブルーとブラックはセラミック)だ。ケース、ブレスレットの質感に合わせてヘアライン仕上げが施され、12時位置のエッチングマーカーにスーパールミノバを塗布。表面に凹凸が生じないように仕上げることで、洗練された外観となっている。120クリックを採用しているため一般的な60クリックに比べて精密な感触が楽しめるのに加え、回転ベゼルの表示精度が高いのもポイントと言えるだろう。


【注目ポイント:重厚なケース】

SHELLBACK V2_ケース
堅牢でありつつ細部に細かい作り込みが施されたケース、ブレスレットも魅力的だ。ケースはダイバーズウオッチ黎明期である1950年代のスキンダイバーモデルを思わせるソリッドでシンプルなデザインを採用。現行のダイバーズウオッチはリューズガードを採用していることが多いが、リューズガードを省いたことでオーセンティックな雰囲気を感じさせる。ブランドロゴのレリーフを刻んだ大振りなネジ込み式リューズは操作しやすく、デザイン的なアクセントとしても存在感を主張している。

クラスプには四つの位置を調整できる内蔵拡張機能が採用され、合計9mm まで工具なしで調整が可能。ブレスレットのコマにレギュラーリンクとハーフリンクを組み合わせた構造を導入したことで、従来のモデルよりも精密なサイズ調整が可能になった。

安価な時計に見られる凸型のコマを使用した擬似的な3連ではなく、削り出しのコマを三つ組み合わせた本格仕様のフラットリンクブレスレット。シェルバックのために独自に設計されたもので、表面の加工はケースと同じくヘアライン仕上げが施されている。規則的な筋目を施すヘアライン仕上げは鏡面に比べて小傷や汚れが目立ちにくく、直線的なケース、ブレスレットの造形を際立たせる効果も発揮している。本格ダイバーズウオッチであるシェルバックV2にとって、最適な仕上げと言えるだろう。


【注目ポイント:搭載ムーヴメント】

SHELLBACK V2_裏面
裏ブタは気密性に優れるスクリューバック仕様。従来のシェルバックはRonda R150を搭載していたが、シェルバックV2ではメンテナンス性を考慮してSellitaのCal.SW200が採用されている。スペックは2万8800振動(ハック付き)、38 時間パワーリザーブを備えている。汎用ムーヴメントのため突出したスペックを備えるわけでないが、広く普及している機械なので信頼性、メンテナンス性が高く、デイリーユースの時計として十分なスペックを備えている。


【注目ポイント:装着感について】

SHELLBACK V2_装着感
ケースは直径40mmでラグの上下幅が約47mm。厚さは約11.9mm。40mm以上だとやや大振り、40mm以下だと少々物足りない印象となるが、適度な重量感と存在感を味わいつつ、ストレスなく着けられる40mmに仕上げた点が心憎い。以前紹介したトゥセノーのウィンドシーカーも同じ設計が採用されていたが、時計本体とブレスレットを繋いでいる弓カンの作りも、装着感を高めているポイントだ。ラグの先端よもり内側にブレスレットが設置される設計になっているため、付け根の可動域が広く、手首とブレスレットの隙間を詰めて装着することができるのだ。バックルはプッシュ式の三つ折れタイプ。二重ロック式に比べると堅牢性はやや劣るが着脱がしやすい。バックルのパーツは肌に触れる部分に斜めのカットと丸みをもたせているのでストレスなく着けられるのも好印象だ。


》Tusenö(トゥセノー)
公式サイト
https://tuseno.com

Tusenö(トゥセノー)公式サイトへ


文◎船平卓馬(編集部)

 

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