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【パテック フィリップ】現代風のエッセンスを加味したワールドタイムを実機レビュー

 2021年はパテック フィリップにとってトピックの多い1年だった。つい先日もティファニーとのダブルネームとなるノーチラスが170本限定でリリースされ、そのうちの1本がフィリップスのチャリティオークションで650万ドル(約7億4000万円)という信じがたい価格で落札されたニュースは、世界中の時計ファンを大いに驚かせた。このほかにも市場でのパテック フィリップ人気は留まるところを知らない。

 一方で21年は新製品も多くリリースされた。コロナ禍で展示会の中止やオンラインでの発表が増え、新モデルに対する注目度の下落が懸念されたが、同社に関してはそんな心配は無縁だった。発表された新作モデルはいずれもクオリティが高かったこともあり、市場からの反応は非常に好評だ。今回はそのなかから、ワールドタイム・クロノグラフ5930Pをピックアップして紹介しよう。

ワールドタイム 5930P
■Pt(39.5mm径、12.86mm厚)。3気圧防水。自動巻き(Cal. CH 28‑520 HU)。1155万円

 ここ数年、市場でのパテック フィリップの人気は、ノーチラスやアクアノートといったスポーツモデルに集中しているかのように見える。しかし、やはり同社の本流はクンロク(Ref.96系)カラトラバに代表されるドレスウオッチ、あるいは時計機構の頂点を行くコンプリケーションにあるはずだ。5930は過去にゴールドモデルがリリースされてきたが、今回のプラチナモデル5930Pは、ノーチラスあたりのファンにも受けそうなちょっとスポーティブなルックスに仕上がっている。


 プラチナのシャイニーなケースは、ポリッシュが非常に美しくエッジが効いている。ダイアルやベルトには流行りのグリーンを合わせており、トレンドへの目配せも怠りがない。ダイアル中央部にはこれまた繊細に波打つようなギョーシェ彫りが施されており、さらに外周部の都市名の印字も美しい。フライバッククロノグラフらしいボリューム感もあるが、ケースサイズは39.5mmとかなり抑えられており使い勝手は良い。


 ワールドタイム機構は10時位置のプッシャーで操作することができる。プッシャーを押すたびに時針が1時間単位で動き、ダイアル外周部の都市名表示と24時間タイムゾーン表示が逆回転する。任意の都市名を12時位置まで動かしたとき、その都市の現在時刻を示しているという機構だ。さらにフライバッククロノグラフ機能も備えているということで、実用性は非常に高い。搭載ムーヴメントはベースムーヴメントのCal.CH 28-520にワールドタイム機能を追加したものだが、28-520は伝統的な垂直クラッチ式を採用しており信頼性は抜群だ。これだけ多機能でありながらダイアルデザインはすっきりしており、視認性が高い点もよく考えられていると思う。


 デザイン、素材、仕上げ、機能とどの角度から考えても、パテックが満を辞してリリースするにふさわしい完成度のコンプリケーションだ。クラシカルな時計製作技法に則りつつも、ディテールには現代風のエッセンスを加味しており、幅広い時計ファンにアピールできるだろう。ほとんど非の打ちどころはないのだが、当然ながら価格もゴージャスで、1155万円という設定だけに誰もが手が届く時計というわけではない。しかし、トータルで考えればその価格に見合うだけの価値は十分にあるし、いつかはパテック フィリップという人々の思いに応えるだけの品格を湛える傑作だと思う。
 
【問い合わせ先】
パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター TEL.03-3255-8109
公式サイト https://www.patek.com/ja/

 

構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎笠井 修

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