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SEIKOのメカクォーツを使った3〜5万円の古典顔クロノグラフ時計が、海外でも人気の理由!【OUTLINEニュース|no.26】

 筆者がプロデュースする時計ブランド、アウトラインの最新作として先頃発表した“パイロットクロノ20thリミテッド”。おかげさまで現在実施しているクラウドファンデイング「ウオッチメーカーズ」での先行予約(※3月21日で終了しました)では、開始してまだ2週間ほどというのに、多くのお申し込みをいただいている。今作は正直なところ古典的なディテールを強めに打ち出したため少し不安だったがほんとうれしい限りである

1940年代のクロノグラフの名機“フライングオフィサー”を世界23都市の時刻も確認できるデュアルタイム時計として再現。3万7400円。パイロットクロノ20thリミテッドの購入はコチラ

 そして今回は、このパイロットクロノ20thリミテッドでも採用したセイコーインスツルのメカクォーツと呼ばれるクォーツ式のクロノグラフムーヴメントについて取り上げたいと思う。

 メカクォーツとは秒針(クロノグラフの場合はクロノグラフ計測秒針)がクォーツ式で一般的な1秒毎に動くステップ運針ではなく、機械式ムーヴメントのごとくスムーズに動くスィープ運針にあえて設定しているムーヴメントである。実はいま、これがけっこう海外のマイクロブランド(小規模な独立系時計メーカー)が採用し、魅力的な時計を作っているのだ。

 そんなメカクォーツの存在を再認識させたのが、2019年に設立されたスイスのマイクロブランド“ファーラン・マリ”ではないかと思う。以前に当ウオッチライフニュースでも「スイス発の独立系ブランド“ファーラン・マリ”に注目」と題して取り上げているので詳しくはそちらを見ていただきたいが、1930〜40年代のパテック フィリップのクロノグラフから着想を得て作られたという同社初のコレクションで“Mr. GREY(写真)”というモデルが、何と時計業界のアカデミー賞とも呼ばれる2021年ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)において設立から10年未満のブランドに贈られるリベレイション賞(Revelation Prize)を受賞して注目を浴びたのである。超有名時計ブランドばかりが受賞する中でだ。

GPHGにおいて2021年にリベレイション賞を受賞したファーラン・マリのMr. GREY

 そのため日本の時計好きの間でもかなり話題となった。しかも、作りのクオリティもさることながらムーヴメントは機械式ではなくクォーツのため価格は日本円で5万7566円と現実的な価格だったこともあって、そのインパクトは強烈だったに違いない(現在は完売)。

 そして、このファーラン・マリのように、セイコーのメカクォーツクロノグラフのムーヴメントを使ったクラシックなクロノグラフウオッチは、日本ではあまり多くないものの海外を見渡すと意外に多い。しかも1940〜70年代のクロノグラフウオッチの古典的なデザインが多い傾向にあることにも驚かされる。

アニメの中でルパン三世が着けていた、赤のラインが象徴的なイエマの当時のクロノグラフを忠実に再現したイエマのミーングラフ スーパー

 ここに取り上げたフランスの時計メーカー、イエマのミーングラフ スーパーもそのひとつだ。これは日本のテレビアニメ「ルパン三世」の第1話で、主人公のルパンが60年代に同社が発売していたクロノグラフウオッチ“ミーングラフ スーパー”を着けているシーンが出てくる。イエマはそれを機械式ムーヴメントではなくこのセイコーのメカクォーツで2021年に復刻。日本でも4万6200円で販売(現在も販売中)するなど、日本では知る人ぞ知る話題作となった。

 同じくメカクォーツを使った魅力的なブランドをもうひとつ紹介したい。それは“Nezumi Studios(ネズミ・スタジオ)”というユニークなネーミングのブランドである。

3カウンターのVK63を採用したネズミ・スタジオのコルボオ。センスの良さを感じさせるカラーリングが北欧ブランドらしい雰囲気

 こちらも当サイトで以前に「ブランド名は“ねずみ小僧”からインスパイア」と題して取り上げているので詳しくはそちらを参照してもらいたいが、スウェーデンのストックホルムを拠点とするマイクロブランドながら、ネーミングが日本の“ねずみ小僧”からとったという何ともユニークなブランドなのである。

 しかしコレクションを見ると至って真面目。そのほとんどが70年代のテイストで作られていてなかなかカッコいいデザインが揃っている。しかも販売価格は日本円換算で約3万7000円と手頃だ。ただ、残念なことに日本での展開はない。

 もちろん、ここに取り上げたブランド以外にもまだまだたくさんあるのだが、ではなぜセイコーのメカクォーツが海外ブランドに人気なのか。

 今回のパイロットクロノ20thリミテッドを作って感じたのは、もちろん機械式にこだわって汎用の自動巻きクロノグラフムーヴメントを使うということもできるが、3針時計なら機械式でも比較的に低コストで作れるものの、クロノグラフになるとコストがグンと跳ね上がってしまうためリスクも大きくなる。加えて分厚い自動巻きに対してメカクォーツならムーヴメント自体も薄いためケースサイズの自由度も高くなる。そのためデザインの幅も広がることから個性を出しやすい。つまり、小規模のマイクロブランドにとってはリスクが少なくてすみ、かつそのぶん独自性を発揮できるという点でとても扱いやすいムーヴメントと言えるのである。

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菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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