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デイトナ初の自動巻きムーヴメントに、ロレックスが施した意外な改良とは!?|ロレックス通信 No.149


振動数とは、テンプ(赤丸印)の往復回転運動が単位時間あたりに何回振れたかを表したものだ。 つまり毎時3万6000振動の場合は、1時間に3万6000回振れたということになる

 しかし、意外にもロレックスはエル・プリメロの誇る3万6000振動を2万8800振動にあえて落として使ったのである。高い精度を出しやすい高振動だが、それゆえパーツにかかる負荷も大きかったのだ。そのため耐久性に考慮して振動数を落としたと言われている。

 しかしロレックスは、テンプ(赤丸印)を大型化し、かつテンワ内側にはロレックスが開発した歩度調整機構である4個のマイクロステラナットを装備、アームも3本から4本に増やして剛性を高めるなど、振動数を抑えたぶん、高精度を保ちつつ安定性をも高める改良を施したのだった。

 アンティークから高年式レファレンスまで数多くのロレックスを手がける修理技術者のクロノドクター・久保氏は、「自動巻き機構の切り替え車はロレックスが特許を取得したものに変更されていますし、各歯車の芯(ホゾと呼ぶ)や時分針が付く筒カナや筒車など、特に磨耗しやすい部分には、エル・プリメロのものではなく、ロレックス独自の太いものが使われて耐久性が高められるなど細かな改良が施されていますね」。加えてムーヴメントの基盤となる地板(プレート)も流用ではなくCal.4030専用のものだとのこと。

 エル・プリメロベースのCal.4030を搭載したRef.16520は2000年までの約12年間製造された。そしてロレックスは、手巻きのバルジュー72系、続いて自動巻きのこのエル・プリメロと計約37年間にわたって傑作と言われる名クロノグラフムーヴメントをベースに独自の改良を加えながら研究を重ねてきたのである。そして、そのノウハウのもと満を持して開発したのが生産開始から22年経った現在も使われているCal.4130だ。そしてそれはまさにロレックスらしさが凝縮され、高い完成度を誇っていたのだった。

 このCal.4130がなぜ凄いのかについては、また別の機会に書きたいと思う。

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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