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意外と知られていない 、短命に終わったもうひとつの5桁レファレンス“旧型デイトジャストの16000番台”とは|ロレックス通信 No.153

 前回(152回)お届けした「並行輸入市場でのロレックスの異常なプレミアム価格化はいつ頃からだったのか!」は、多くの方からたくさんの反響をいただいた。ロレックスの異常とも言える現在の並行輸入市場について、あらためてその関心度の高さを実感させられた思いだった。

 今回のロレックス通信では、そんな乱高下激しい現行モデルではなく旧型にフォーカスしてお届けする。以前の第146回で取り上げたアンティークの部類に入る「第3世代(1600番台)のデイトジャスト」が多くの反響をいただいたたことから、せっかくなので1600番台以降の旧型デイトジャストについて、第4世代の16000番台、第5世代の16200番台、そして第6世代の116200番台と、順に3回にわたっておさらいしてみたい。

古典的な雰囲気が残るデイトジャストの第4世代、Ref.16014

 第4世代にあたる16000番台は1977年頃に登場した。それまでの1500系自動巻きムーヴメントの進化版として毎時2万8800振動にハイビート化され、加えて秒針停止機能(ハック)や日付けの早送り機能(クィックチェンジ)など精度だけでなく利便性も格段に向上した3000系が新たに開発された。いわばロレックスの基幹ムーブメントが新たな時代に入った、その最初のモデルというわけだ。

 しかし、そんな次世代ムーヴメントとして登場した3000系だったが、いくつかの改善点が見つかった。そのためロレックスはその改良版である後継機としてCal.3135を開発。それに伴って16000番台は10年あまりの製造と比較的に短命に終わったレファレンスとなってしまったのである。

 その改善点のなかでも大きかったのが、時分針に関係なく日付け表示を直接変更できる便利な“日付けの早送り機能”だった。それを司る“遊動日修正車”というパーツの動作が不安定だったため、しばしば日付けの早送りができないということが生じたのだ。デイトジャスト機構との組み合わせにも難があったと言われている。

 これについて、旧型ロレックスのメンテナンスを得意とする修理技術者、クロノドクターの久保氏に聞いてみたところ「Cal.3035の場合はカレンダー機構が不安定な個体がたまにあり、デイトジャストせずに半目になる場合は、ヨークバネを強くして調整します。また、日付けが早送りしにくい場合は、遊動日修正車をきれいに磨いて、しっかり噛み合うように調整すれば直ります」と、この点についてはメンテナンスをすればあまり問題視するほどでもないのではとのこと。

 この3000系のムーヴメントだが、日付け表示のないタイプのCal.3000についてはエクスプローラー I や日付け表示の無いサブマリーナーに1988年から2000年頃まで引き続き採用されていたことからも、問題はカレンダーでムーヴメント自体の完成度は高かったことがわかる。

縦と横に筋目加工を幾重にも施し、シルクの生地のような繊細な風合いが特徴の通称モザイク文字盤

 ただ久保氏は「Cal.3000にしても3035にしても、手巻きでゼンマイを巻き上げるためのスライディング中間車が新たに追加されており、その中間車の中心軸が磨耗しやすいという弱点があります。1番受けの交換にまで影響するため、購入する場合は定期メンテナンスやメンテ歴があるものが安心だと思います」とのことだ。

 さて、この16000番台だが、魅力はどこにあるだろうか。一番に挙げられるのは文字盤についても落ち着いていてケースやブレスなど古典的な雰囲気が残っている点なのではないかと思う。おすすめはここに取り上げた、シルクの生地を思わせる通称モザイクと呼ばれる文字盤。これのように当時にしか存在しない文字盤というのも独特の雰囲気があってなかなか楽しめるのではないか。それともうひとつ、ステンレスのベゼルになるが、エンジンターンドベゼルのRef.16030もよりレトロな感じがしていいだろう。

<16000番台の主なレファレンスは以下のとおり>
【Ref.16000】SSケース&ブレス(スムースベゼル)
【Ref.16030】SSケース&ブレス(エンジンターンドベゼル)
【Ref.16013】SSケース(K18YGフルーテッドベゼル)
【Ref.16014】SSケース(K18WGフルーテッドベゼル)
【Ref.16018】K18YGケース(K18YGフルーテッドベゼル)ほか

なお、現在の中古実勢価格だが60万〜80万円台で平均すると70万円ぐらいで流通しているという感じだ。

【写真】デイトジャスト、第4世代の他のおすすめモデルをチェック!

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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