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【グランドセイコーの機械式ムーヴはすでに世界水準!?】搭載モデルも徐々に増える“キャリバー9SA5”の実力を解説

 2009年、毎時3万6000振動へと回帰し精度をいっそう高めたキャリバー9S85の発表に続き、その翌年には約3日間のロングパワーリザーブを実現した9S65を発表するなど、機械式時計の分野で存在感を示したグランドセイコー。
 そんな同ブランドが新世代の機械式ムーヴメントとして20年に発表したのが“9SA5”である。初出から2年以上が経過し、その搭載モデルも徐々に増えてきたいま、改めてこのムーヴメントについて解説したい。

 

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2020年に発表されたCal.9SA5は、毎時3万6000振動のハイビートと約3日間のロングパワーリザーブを両立させた、グランドセイコーの次世代機だ。日送り機構も刷新されており、9S系ムーヴメントでは初の瞬間日送り機構が装備されている

【画像ギャラリー:9SA5搭載モデルを見る】

 

 開発陣は、先に挙げた二つのキャリバーを上回る性能を得るため、従来にないアプローチを盛り込み、ゼロベースから9SA5を創出したという。そのひとつが、“デュアルインパルス脱進機”と名付けた新型の脱進機である。この特徴を簡潔に言うと、高効率なデテント脱進機と安全性の高いスイスレバー脱進機の良いところを合わせた、いわば“折衷型”である。またこれに加えて独自の巻き上げヒゲもユニークだ。これはヒゲゼンマイの取り付け位置を捻ることで、従来のフリースプラングでは難しいとされた等時性の調整を可能としたもので、最適な形状を見出すのに、実に8万とおり以上のシミュレーションを行ったという。

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調速機周りが一新されており、デュアルインパルス脱進機と、グランドセイコーフリースプラングと名付けられた新たな独自機構が採用されている。また写真では見えていないが、ヒゲ持ちから大きく捻った、独自の巻き上げヒゲが採用される

 また9SA5では、地板を拡大し、すべての機構を同じ階層に置く水平輪列構造を採用して厚みを5.18mmに留めたというのも特徴。自動巻きとしては標準的な厚さだが、新たに両持ちのテンプ受けを採用し、実用時計として必要な耐久性を向上させた。さらに地板を拡大したことで二つの香箱を無理なく納め、ハイビートながらも約80時間のロングパワーリザーブを実現している。

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一般的にハイビートほどエネルギーを要するため、パワーリザーブは短くなりやすいが、9SA5ではツインバレルを採用し、80時間の長時間駆動と、毎時3万6000振動のハイビートを両立させた。動力の伝達効率も極めて高いのだろう

 グランドセイコーは現代の実用時計に必要な要件を高次元で満たした9SA5で、量産機の新たな世界水準を示したのだ。

 

【問い合わせ先】セイコーウオッチ お客様相談室 TEL.0120-061-012
https://www.grand-seiko.com

 

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文◎堀内大輔(編集部)

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