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【ロレックスの話題作を実機レビュー】やっぱり“デカかった”。最強のスペックを誇るディープシーチャレンジ

 1960年1月、スイスの海洋学者ジャック・ピカールとアメリカ海軍大尉のドン・ウォルシュが潜水艇トリエステ号に乗り、太平洋マリアナ海溝へと潜航し、世界の最深部に挑んだ。約9時間におよぶ潜水の末に、水深1万916m(3万5800フィート)に到達。人類史上初となる偉業をなし得たのである。そのとき潜水艇の外側には、ロレックスが特別に製作したディープシー スペシャルが取り付けられており、偉業達成後も無傷で時を刻んでいた。

 

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ロレックスのアイコンであるダイバーズウオッチの数々。左からディープシー (2008年)、ディープシー チャレンジ (2022年)、ディープシー スペシャル (1960年)、ロレックス ディープシー チャレンジ(2012年)、サブマリーナー(1986年)。写真:ロレックス

 これは、ロレックスの防水技術の高さを象徴するものとしていまも語り継がれる有名なエピソードである。
 歴史的偉業の達成から52年後の2012年3月26日。映画監督で探検家のジェームズ・キャメロンが、潜水艇ディープシー チャレンジャー号に乗り、再び世界最深部へと挑んだ。今度は史上初となる単独潜水で、見事に水深1万908mの潜航に成功。なおこのときもまた潜水艇にはロレックスが特別に製作したディープシー チャレンジが取り付けられており、52年前と同じく、無傷で過酷な環境下においても正確な時を刻んでいたのである。
 そしてジェームズ・キャメロンによる偉業の達成から10年を経た22年11月1日。同プロジェクトのために開発された試作モデルをさらに進化させた“ディープシー チャレンジ”がレギュラーモデルとして発表されたのである。このディープシー チャレンジは、既存のロレックス ディープシーの3900m防水を遥かに上回る1万1000mmという、機械式腕時計で世界最高レベルの防水性能を実現。さらにこの圧倒的なスペックを実現するため、50mm径というインパクト抜群なビッグサイズであったことも大きな話題となった。
 編集部ではこの話題作の実機を目にする機会を得たため、既存のロレックス ディープシーと比較しつつレビューをお届けする。

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(右)ディープシー チャレンジ。Ref.126067。TI(50mm径/約23mm厚)。1万1000m防水。自動巻き(Cal.3230)。国内参考定価309万3200円
(左)ロレックス ディープシー。Ref.136660。SS×TI(44mm径/約18mm厚)。3900m防水。自動巻き(Cal.3235)。国内参考定価172万1500円

 月並みで恐縮だが、ファーストインプレッションは、やはり“デカい”という点に尽きる。44mm径のロレックス ディープシー(以下RD)より6mmも大きいのだから、当然なのだが、そのデカさは想像していた以上だ。
 またディープシーチャレンジ(以下DC)では、外装にRLXチタン(グレード5のチタン合金)を採用し、軽量化が図られている……。が、やはりこれほどのサイズになるとかなり重い。仮に、従来と同じステンレススチールを用いていたならば、もはや重りを着けているようなものだっただろう。おそらくDCに実用性を期待するという人は少ないと思うが、試着できるならば、しておくに越したことはない。

【ディープシーチャレンジとロレックス ディープシーのディテール比較】

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ケース径だけでなく、厚みも結構な差があるため、比較するとロレックス ディープシーが小振りな時計に見えてしまうほど存在感がある。重量は右が約215グラムに対して、左は約250グラム。外装はフルチタンながら、やはり重い。また大きなヘッド部分を安定させるため、ブレス幅も広げられている

 搭載されているのは既存のキャリバー3230である。ダイバーズウオッチとして性能面では文句の付けようがないハイスペック機だが、おそらく設計上の制約として、文字盤サイズをこのムーヴメントの直径に合わせざるを得なかったのだろう。そのため文字盤とケースとの間を埋めるリングが幅広く、正面から見ると全体のバランスとしてやや間延びした印象が否めないのだ。欲を言えば、もう少し精悍さが際立つ、デザイン的な工夫があると良かった。
 また本作は22年11月1日に発表され、同月末には早くも国内での流通が確認されている。国内定価は約310万円。RDより130万円以上も高額だ。初のフルチタン仕様で圧倒的なスペック、特別感などを考えれば、この価格設定にもある程度納得できるのではないか。もっとも、実勢価格では500万円前後とさらに高額だ。高額なうえに実用向きでもないモデルだが、ロレックスの防水技術にかける情熱とロマンが詰まったその圧倒的な存在感に、所有欲を掻き立てられる人は多いのではないだろうか。

 

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文◎堀内大輔(編集部)/写真◎笠井 修

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