アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
セイコー
クレドール KZT014
今回紹介するのは、セイコー クレドールのKZT014だ。
オーデマ ピゲのロイヤルオークを思わせるような8角形のベゼルやケース一体型のブレスレットの造形が特徴的だ。一見するとクレドール ロコモティブにもよく似ているため、ウオッチデザインの巨匠であるジェラルド・ジェンタ氏が手掛けたデザインにも見えるが、本モデルのデザインはジェンタ氏によるものではなく、セイコーの社内デザイナーによるものだった可能性が高いとのことだ。
ラグジュアリー感あふれる造形とは裏腹に、スクリューバックの裏ブタやネジ込み式のリューズが採用されており、製造当時は10気圧防水を誇っていたとされている。同社のダイバーズウオッチを思わせるようなディテールのリューズが、どこかスポーティーさを感じさせる。

【写真の時計】セイコー クレドール KZT014。SS(37.5mm径)。クォーツ(Cal.9461)。1981年頃製。66万円。取り扱い店/BQ
ムーヴメントにはツインクォーツのCal.9461を搭載。温度変化によって発振周波数が変化するクォーツ式の弱点を補うべく、2種類の水晶振動子を用いることで補正を行い、年差レベルの精度を実現していた。クォーツ式でありながらも機構や精度に一切の妥協を感じさせない作りは、クォーツ式腕時計のパイオニアであるセイコーならではのこだわりと言えるだろう。
細部の仕上げに注目すると、鋭いエッジこそないものの、平滑面を強調するような研磨が施されており、直線と曲線が絶妙なバランスで共存する造形はほかのラグジュアリースポーツの時計では見られない仕上がりだ。特に、ケースから伸びたブレスレットを側面から見た際に現れる稜線は、SS製であるとは思えないほど有機的で、まるで金属とは思えない柔らかなフォルムを描いている。
そしてこの外装は見た目の美しさだけでなく、装着感にもこだわった工夫が数多く詰め込まれている。
一例として、ケース一体型のブレスレットの根元の形状が挙げられる。ラグの短いブレスレット一体型の時計にありがちな、手首への座りの悪さを解消するため、ケース根元のコマがあらかじめ手首に沿うような角度で固定されており、必要以上に稼働しない設計となっている。これにより、装着時のフィット感が大きく向上しているのだ。
さらに、それぞれのコマには丁寧にエッジを落とした面取り加工が施されており、肌触りの良い滑らかな装着感を実現している。加えて、この仕上げは面の歪みが極力抑えられたものであり、ブレスレット側面から背面にかけての一体感あふれる造形にも貢献している。
複雑な形状のパーツで構成されていながら、それをまったく感じさせない統一感のある外装デザインこそが、本モデルの最大の魅力と言えるだろう。
1980年代当時に、現行品にも引けを取らない造形デザインを実現したセイコーの底力を感じさせる1本に注目だ。
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文◎LowBEAT編集部