アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
シチズン
クロノメーター
今回取り上げるのは、1960年代に製造されたシチズン クロノメーターだ。
1962年に発売され、モデルチェンジが頻繁に行われていた当時としては比較的長期にわたり、65年まで製造されたシリーズとされている。発売時期や価格帯、高精度をうたった製品コンセプトなどから、同時期に展開されていたグランドセイコーを意識したシリーズであったことがうかがえる。
面取りが施された太くどっしりとしたラグや、当時の腕時計としてはかなり大型となる37mm径のケースを採用している点が本シリーズの特徴だ。文字盤が表面全体に占める面積が非常に大きいため、腕元ではサイズ以上の存在感を発揮してくれるはずだ。
スナップバック式の裏ブタには、鷲をモチーフにした大きな金色のメダリオンがはめ込まれており、フラッグシップモデルとして送り出された本作の特別さを物語っている。防水性は限定的ではあるが、裏ブタにはパッキンが備えられているため、使用時の汗や湿気からムーヴメントを保護してくれるだろう。

【写真の時計】シチズン クロノメーター。SS(37mm径)。手巻き。1960年代製。48万4000円。取り扱い店/BQ
【画像:巨大なテンプを採用した大径のムーヴメントや着用イメージを確認する(全5枚)】
洗練された外装デザインもさることながら、この時計最大の魅力は、精度を追求するなかで試行錯誤を重ねて生み出された専用設計の大径ムーヴメントにあるのではないだろうか。精度を司るテンプと、ゼンマイを収める香箱車を最大化するため、従来のムーヴメントとは大きく異なる設計が数多く採用されている。
その一例として挙げられるのが、2番車の位置を変更したレイアウトだ。通常はムーヴメントの中心に配置され、分針の役割を担う2番車をオフセットすることで、スペース効率に優れた設計を実現。これによりテンプと香箱車を最大化しつつ、主要部品を無理なく収めることに成功している。加えて、グランドセイコーなどが普及機のクラウンなどをベースにムーヴメントを発展させていたのに対し、本作では専用ムーヴメントを一から再設計している点も大きな特徴だ。輪列レイアウトには58年登場の“デラックス”との共通点が見られるものの、巨大なテンプの下に潜り込ませたガンギ車や、両持ち式のテンプ受けなど、かなり独創的な設計が採用されているのが見て取れる。
また、2番車をオフセットする輪列設計は、多くのメーカーがムーヴメントの薄型化や高精度化を図る際に採用してきた手法でもある。単に厚みを抑えるだけでなく、パーツレイアウトの自由度が高まることで、精度に関わる部品の大型化や、伝達効率に優れた輪列配置を実現できる利点があった。分針への動力伝達方式に違いはあるものの、他社ではゼニスのCal.135やセイコーのゴールドフェザー、セイコー56系、ユニバーサル・ジュネーブのマイクロローター搭載機、さらにはETA2824やETA2892などにも同様の設計思想が見られる。
このようにスペース効率を極限まで追求し、精度を司る部品を徹底的に大型化した結果、シチズン クロノメーターは圧倒的な精度を実現するムーヴメントを手に入れた。精度の高さはもちろん、直線的に分割されたブリッジや筋目仕上げが施された地板、艶やかな鏡面仕上げの施された角穴車などが盛り込まれた大径ムーヴメントの美しさも、この時計の大きな魅力だ。国産時計好きなら、一度はお目にかかりたい逸品である。
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文◎LowBEAT編集部
