アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
リコー
ダイナミックワイド DX
今回取り上げるのは、1960年代にリコー時計が手掛けた、ダイナミックワイド DXだ。
一般的な国産時計が3時位置に日付と曜日を並べて配置する中、本個体は12時位置に曜日を英語と漢字を合わせたフルスペル(例:SUNDAY日)で表示するスタイルを採用している点が最大の特徴だ。
この他にも、筆記体を用いた優雅なロゴデザインや6時位置に日付け表示を備えたシンメトリックな文字盤など、国産時計の中でもハイセンスなデザインを取り入れたモデルであった。
リコーの時計史を辿ると、1957年に腕時計製造へ参入した高野精密工業(タカノ)へと行き着く。タカノはセイコーやシチズンにも劣らない技術力を持ち、“シャトー”をはじめとした美しい薄型高級時計を製造し、一時代を築いた。しかし、伊勢湾台風の被害や経営難などの影響も重なり、わずか4年11カ月で腕時計製造事業から撤退。その後、62年にリコー傘下となり、リコー時計として再出発を図ることとなる。

【写真の時計】リコー ダイナミックワイド DX。Ref.34803。SS(35.5mm径)。自動巻き。1960年代製。4万9800円。取り扱い店/WTIMES
【画像:独特な曜日表示の文字盤や、堅牢なねじ込み式の裏ブタの状態を見る(全5枚)】
60年代後半には、セイコーの“ロードマチック”やシチズンの“セブンスター”が自動巻き市場を席巻する中、リコーも66年に対抗馬として“ダイナミックオート”を投入。その後も、これをベースにデイデイト表示を備えた“ダイナミック ワイド”や派生モデルが展開されることとなる。
また、これらのモデルにはアメリカや東南アジア市場への輸出を意識したものも多く、高い実用性と手頃な価格から人気を博していたようだ。
今回取り上げた“ダイナミック ワイド DX”もそのバリエーションの一つであり、30石仕様のムーヴメントや、2時位置に備えられた日付早送り用のプッシュボタンなどを特徴としていた。
現在ではケースやパッキン類の経年劣化が考慮されるため、取り扱いには注意が必要だが、当時は5気圧防水や耐衝撃性をアピールポイントとして宣伝されていたようである。
国産アンティークウオッチの中でも、セイコーやシチズン、オリエント、タカノの陰に隠れてしまいがちなリコーだが、優れた設計思想や外装デザインには目を見張るものがある。ニッチでありながらも優れた品質を備えたリコーのダイナミックワイドシリーズにぜひ注目してみてほしい。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎WTIMES
