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【いまだ20万円台で買える】ボタンひとつで操作。64年セイコー製の戦後日本初のクロノグラフ時計に込められた矜持

世界的に高騰するヴィンテージのクロノグラフ時計。名の知れたブランドの50〜60年代の個体となるといまや100万円以上することも少なくない。それに比べるとセイコーも近年上昇傾向にあるとはいえ、ここに取り上げたクラウン クロノグラフでさえ20万円台でまだ手に入れることができる。

ヴィンテージ市場にありがちな「あの時買っておけば」なんてことになる前に、セイコーが気になっている方は、特に歴史的なモデルについてはそろそろ一考の余地はあるような気がする。

今回ここに取り上げたこのクラウン クロノグラフもそんな歴史的なモデルのひとつに挙がる。1959年に諏訪精工舎が開発した中3針のクラウンをベースに、クロノグラフ機構を加えて開発された腕時計型としては戦後日本初とされている手巻き式のクロノグラフ時計だ。

セイコーが欧米ブランド以外で初めて公式タイムキーパーを務めた64年の東京オリンピック開催と同時に発表されたことでも知られており、関係者向けのものと思われる個体の裏ブタには五輪マークが刻印されている(写真リンクに掲載)。

クラノグラフ時計というとストップウオッチ機能を操作するためのプッシュボタンが2時(スタート&ストップ)と4時位置(リセット)にあるのが一般的だが、このクラウン クロノグラフは2時位置にひとつだけプッシュボタンがあるワンプッシュクロノグラフという仕様なのも特徴のひとつ。スタート、ストップ、リセットの操作をひとつのボタンで行うことができるというものだ。

公式タイムキーパーとしての矜持なのだろう。これにはストップウオッチ機能の誤操作を防ぐ狙いがあったといわれる。搭載するのは手巻き式のキャリバー5719A(五輪後に製造された後期は5717A)。何とクロノグラフの制御にはカム式ではなくスイスの高級クロノグラフに使われるコラム(ピラーとも)ホイール式が採用されている。

これは複数の歯が付いた円柱状のパーツが回転して制御するもので、プッシュボタンの上下運動を回転運動に変換してクロノグラフにスタート、ストップ、リセットの動きを与える。耐久性が高く操作が確実だが製造コストが高い。

また歯の数が多いほど制御が精密になるため、有名メーカーの高級機ほど多い。ちなみにクラウン クロノグラフは6枚だ。どんなものか興味がある方は、リンク画像のムーヴメント写真で確認してほしい。リューズ位置のちょうど左側にあるパーツがそれである。

外装面ではベゼルの仕様違いがある。東京オリンピック前に製造された初期のものはブラックのプラスチックベゼル、その後に金属製インサートを採用したもの、そして五輪後にはこの個体のようなステンレススチールベゼルに移行している。プラスチックベゼルは破損しやすかったことから、最終的にステンレスに変更し堅牢性を高めていったことがわかる。

【画像】クラウンクロノの細部写真と東京五輪関係者用モデル

セイコー クラウン クロノグラフ
Ref.5717-8990。SS(37.5mm径)。Cal.5717。1964年製。26万4000円
協力◎JAPAN VINTAGE WATCH SHOP
https://lowbeat.jp/jvw-shop/

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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