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そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
エテルナ
エテルナマチック
今回取り上げるのは、1960年代に製造されたエテルナマチックだ。
ベゼルとラグの上面に金張りの施されたゴールドトップ仕様のケースと、深みのあるブラック文字盤がエレガントな印象を与える仕上がりのモデルだ。モデル名にマチックと入っていることから分かるように、自動巻きムーヴメントを搭載している。
現代の機械式腕時計において、“自動巻きのローターがスムーズに回転する”ことは当たり前のように思える。しかし、この滑らかな回転を実現し、自動巻きの信頼性を劇的に向上させた立役者が、スイスの時計メーカー、“エテルナ”であったことをご存じだろうか。
1856年にスイスのグレンヘンで創業したエテルナ。その歴史の中で最も燦然と輝く功績が、1948年に発表された自動巻き腕時計“エテルナマチック”の発明である。
40~50年代当時の自動巻き腕時計は、ローターの軸受けにかかる摩擦が大きく、摩耗や軸折れといったトラブルが頻発していた。これを解決するため、当時のエテルナの開発チームが着目したのが、航空機計器や高級カメラのシャッター機構といった精密機器分野で活用され始めていた“超小型ボールベアリング”の技術であった。

【写真の時計】エテルナマチック。GF×SS(約35mm径)。自動巻き(Cal.1426U)。1960年代製。16万8000円。取り扱い店/ジャックロード
【画像:トップゴールド仕上げのステンレススチール製ケースの状態を見る(全4枚)】
そこで同社は、時計業界には存在しなかった“直径0.6mmの極小鋼球”をローター軸に組み込むため、エテルナはスイスの精密ベアリング専門メーカーRMB社(Roulements à Billes Miniatures SA/ビエンヌ)とタッグを組み、5つのボールベアリングを用いた革新的なローター構造(4点接触構造)を開発。摩擦抵抗を低減し、わずかな腕の動きでも効率よくゼンマイが巻き上がるメカニズムを確立した。(Roulements à Billes Miniatures SA公式ホームページ、Historyページより引用)
これにより、48年に自動巻きローターの軸受けにボールベアリングを採用した初の自動巻きムーヴメント、“Cal.1198”を搭載するエテルナマチックが誕生したのだ。ちなみに、同キャリバーはレディース向けの小径ムーヴメントであり、小径で巻き上げ不足に陥りやすいという欠点を補う目的があったと考えられる。
その後、メンズ向けとなる11.5リーニュ(約26mm径)のCal.1237などでもボールベアリングが採用され、翌1949年からの市販を経て時計業界全体に浸透していくこととなった。この5つのボールベアリングはエテルナの象徴となり、文字盤に誇らしげに掲げられたブランドロゴとして受け継がれた。また、エテルナのムーヴメント部門が後に巨大エボーシュ会社“ETA”の母体となったことからも、同社が腕時計業界全体に与えた技術的影響の大きさが窺える。
ちなみに、本個体に搭載されるムーヴメントは、初期のCal.1237の成功を受けて開発された第二世代のCal.1426U。ムーヴメントのベース部分の輪列設計の最適化や薄型化、自動巻きモジュールのリバーサー機構の改良がおこなわれた、完成度の高いムーヴメントであった。一見するとETA2824などと似通った見た目のムーヴメントだが、各所の設計が全く異なり、互換性もない専用設計のムーヴメントだ。
ロレックスやオメガといったメジャーブランドの陰に隠れがちだが、技術的背景とデザインの完成度を鑑みれば、エテルナマチックはヴィンテージ市場における“正当な評価を受けるべき傑作”の一つと言える。
他分野の技術革新から着想を得て、現代のほぼすべての自動巻き腕時計の“標準”となったボールベアリング技術を開拓したエテルナマチックは、時計史に深い関心をもつ時計愛好家にこそ手にしてほしいヴィンテージウオッチだ。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎ジャックロード

