【ロレックス】通信 No.064|オイスター デイトにもあった! 幻のレフティー仕様

 以前、当連載のNo.011で「20万円台で狙いえる、ドレス系アンティーク」と題した記事の中で、その代表的なもののひとつに手巻きオイスターを取り上げたが、そんな手巻きオイスターに珍しいレフティーモデルの存在が明らかになったため、紹介したい。

 レフティーモデルとは、通常は右側に付いている時刻調整などを行うためのリューズが左側に付いているものを指す。つまり右手首に時計を装着する人のための特別仕様なのである。

 ロレックスにおいては確かに1920年代には一部製造されたようだが、以降、右リューズを基本スタイルとしており、左リューズ仕様はほとんど存在しないと言われている。過去には50年代製の金無垢デイトジャストのレフティー仕様が海外オークションに出品されたこともあったが、ほかに公の場で確認されることはほとんどなく、極めて珍しい。

オイスターデイト プレシジョン レフティー。Ref.6694。SS(35㎜径)。手巻き(Cal. 1225)。1974年頃製

 これはかれこれ3年前の話になるのだが、それが国内のアンティークショップにあるということで、編集部で実際に現物を見せてもらった。ここに掲載した写真はそのときのものなのである。

 ベーズモデルは手巻きのオイスターデイト プレシジョンだった。実物を手にする機会も得て色々と確認してみたが、シリアルナンバーから推測すると製造は1974年頃。時期的には、当時のロレックスは、国や企業などからのオーダーで別注の製作を盛んに行っていたため、この個体もその類かと考えられている。

本来はデイト表示のすぐ横にリューズがあるのが、レフティー仕様では対角上の離れた位置にあるため見慣れず、フォルムには多少違和感があった

 ただ、特別仕様といってもこのレフティーの場合は、文字盤を180度回転させるとできてしまうためそれほど難しいことではない。そのため、この個体についてスイスのロレックス社に確認してもらったところ、72〜75年の間に1000本程度製造された特別モデルだということは明らかになったのだ。残念ながらこれ以上の詳細はわからなかったが、存在していたことだけは事実のようなのである。

協力:クールオークション

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。