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「アウトライン(OUTLINE)」裏話【第1回】オリジナルブランドを作ってしまった

ひどいもので8月10日以来、3カ月ぶりのブログの更新となってしまいました。ことブログとなると、どうも筆が進まないといいますか。。。紙だと僕は結構書くのは早いほうなんですがね。

編集畑で何十年も常に締め切りに追われて過ごしていますと、時間的な制約がないというのは、なかなかエンジンがかからないものです。

さて、すでにパワーウオッチなどでご存じの方もいらっしゃると思いますが、この度「アウトライン(OUTLINE)」というオリジナルブランドを立ち上げました。
時計専門とはいえ、一介の編集者が時計のブランドなんて…。
正直、自分でもかなり大それたことをしてしまったと、いまさらながらに感じております。

そこで、今回から数回に分けて、このブランドについて書きたいと思います。
まずは、そもそもなぜ時計ブランドを立ち上げたのかということから。

僕は、2008年に「NEXT WATCH」というタイムギアの前身となるカジュアルウオッチ専門誌を立ち上げました。現在刊行するタイムギアも含めると10年。この間というもの、これらの媒体を通してカジュアルウオッチもたくさん見させていただきました。そんななかでひとつ感じていたことがあります。それは、デザインがとても画一化されてきているということです。近年は特に顕著ですよね。

左が2008年に創刊した「NEXT WATCH」。右が、その後継雑誌として2010年に創刊した「TIME Gear」。だいぶ進化している(笑)

 

 

 

 

 

 

ざっと振り返ると、これまでのメンズ向け腕時計といえば「デカ厚」「3Dインデックス」「北欧」「ミニマル」という大きく四つのトレンドが特に市場を牽引していたように思います(もちろんこれ以外にもたくさんあります)。

10年前は、高級時計もそうでしたが、当時はまさにデカ厚、そしてその後はデカ厚に3Dインデックスが加わり、次に北欧デザインブーム。そして極細のバーインデックスを使ったスッキリしたミニマル系デザインが最近までのトレンドでした(いまもそうかもしれませんが)。

やはり高級時計とは違い、カジュアルウオッチの場合は、ファッションに近いのかもしれませんね。市場のトレンドがセールスに大きく影響する。大手メーカーは別としても中小の各メーカーはそのトレンドに合わせる傾向にあります。いくら良い時計を作っても売れないとなんにもなりませんからね。だから、みんなデザインが似通ってしまう(笑)

そんなわけで、あまりトレンドを意識しない小さなブランドがひとつぐらいあってもいいのではないか、なんて勝手なことを考えたわけです。

僕は、どちらかというと現行品よりもアンティークウオッチが好きなため、1940〜60年代に作られたもののほうにどうしても食指が伸びます。派手さはないですが、味わいが好きですね。

つまり、アンティークウオッチのような雰囲気のデザインがカジュアルウオッチにもっとあってもいいのでは、とずっと考えていました。

そこで、あるメーカーさんにお願いして、ヒストリカルコレクションやANA(全日本空輸)の別注モデルなどで、アンティークテイストの時計の監修をさせていただいたのです。

ウエニ貿易さんとのコラボレーション企画としで2015年から商品の監修をさせていただいた「ゾンネ・ヒストリカルコレクション」。1940〜60年代をコンセプトに4種類のコレクションを制作

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そのときに思い知らされたのが、売り場で時計の良さを訴求することの難しさでした。

時計自体は結構イメージどおりに良くできたと思っていても、実際にショップのショーケースに並んでいるのを見て愕然。大振りサイズで押し出しの強いデザインの時計が多く、その中に埋れて、まったく目立たないうえに、時計のイメージさえも違って見える…。

創るよりも、売ることの大変さをあらためて痛感させられました。

高級ブランドは、ブランドイメージを保つために陳列ケース自体も自らが製作したものをショップに持ち込みます。それほど陳列したときに感じるブランドの世界観を大切しているからです。売るというのはまさに、こういうことなんだろうなぁ〜、と感じたのでした。

コンセプトや世界観をプロダクトから考えるのではなく、ブランドとして独自の世界観を作り、それをぶれずに伝えていく。しかしそれには、監修ではなくやっぱり自分自信の責任において、しっかりと作っていかなければ、魅力や良さを、ちゃんとわかってもらうことは難しいと。そんな想いから、オリジナルブランドを立ち上げたのであります。なんと編集部のスタッフにはまったく相談もせずにです(笑)

ブランド名は「アウトライン(OUTLINE)」。アンティークウオッチそのものズバリではないですが、機械式腕時計の黄金期、1940〜60年代の雰囲気を大切にし、その時代のテイストを日常使いで楽しんでもらいたいと「概略・あらすじ」といった意味合いの名前を付けました。そして僕のような50歳代後半でも、安っぽくなく安心して着けられて、しかもファッション的にもいい感じで決まる。そんな時計のイメージを大切にしながら小ロットでこぢんまりと展開していきたいと考えています。

第2回に続く…。

記念すべきファーストコレクションを2019年1月11日発売!
現在「タイムギアWEBオンラインショップ」にて先行予約販売受付中!

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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