【ロレックス(ROLEX)】通信 No.007|旧型GMTマスターII(後編)。Ref.16710を購入する場合のポイントと注意点

旧型Ref.16710の魅力は価格だけでない。全体のバランスと着けやすさでも高支持

 前々回(No.005)に引き続きその後編として、2006年(2007年に新型が発表された)で事実上の生産終了を迎えたGMTマスターIIのRef.16710について、実際に購入する際の予備知識として、最低限知っておいてほしいポイントと注意点をまとめてみた。

 そもそもRef.16710の製造が開始されたのは1988年のこと。何と18年間も製造されたことになる。そして生産終了してからまだ10年ちょっとしか経っていないというのに、現在の実勢価格は100万円オーバー、生産終了間近の個体で未使用に近い状態のものに至っては300万円を軽く超えているものも少なくない。この異常とも言える高騰の原因は、定価の倍以上という、こちらも異常なプレミアム価格化となった現行モデルのRef.126710BLROが大きく関係していることは言うまでもない。

1988年から2006年まで製造された旧型GMTマスターII、Ref.16710。SSモデルのベゼルカラーにはご覧のような三つのバリエーションが存在する。なお、誰が付けたのかは定かでないが青赤を「ペプシベゼル」、黒赤を「コークベゼル」と愛称で呼ばれる(シーズ・ファクトリー刊「ゼロからわかるロレックス・改訂版」)

 ただ、前回のコラム(No.006)で書かせていただいたとおり、最近このプレミアム価格の状況が少し変わってきたのである。それは240万円近くまで上昇した現行のGMTマスターIIが、いまでは200万円を切るまでに下がったからだ。

 現在、Ref.16710で、コンディションの良い個体を狙おうとすると恐らくは130〜150万円ぐらいの予算になるだろうか。そうなると現行モデルとの価格差は40〜60万円。あえて10年以上前の旧型を狙う理由が以前よりはちょっと薄らいできているような気がするのだ。

 とは言え、この旧型の魅力は、何もこの価格面だけではない。現行モデルは、ケース径こそ旧型と同じ40mmだが、リューズガードからラグにかけてのフォルムが太くがっしりと作られている。それに対して、スマートなプロポーションのRef.16710は、全体のバランスも良くしかも着けやすい。そこに魅力を感じているユーザーも決して少なくないのである。

 加えて、青赤ベゼルのほかに黒の単色、黒赤と選択肢が多いのと、比較的に流通量も多く、コンディションの良い個体も探しやすいという点もポイントに挙げられるだろう。

ぜひ覚えておきたい四つのマイナーチェンジ

 さて、このRef.16710は、約18年間というロングセラーだったこともあり、その間にはマイナーチェンジが行われている。ここではその代表的な四つの変更点を紹介する。およその製造年代について、いちいちショップスタッフに確認せずとも外見で判断がつくので、購入を考えている方はぜひ覚えておいて損はないだろう。なお、変更時期については、公式に発表されたものではないため、目安として参考にしていただきたい。

<バックルの変更>

 オイスターブレスレットのバックルだが、当初は一般的なシングルロック仕様が採用されていたが、1995年ごろからダブルロック式に変更された。この2重のロック機構が採用されたことにより少々の激しい動きでもバックルが外れるということはほとんどなくなった。

トリチウムを使用している場合は6時位置のバーインデックス下部分(写真上)に“SWISS-T<25”と表記されている(シーズ・ファクトリー刊「ゼロからわかるロレックス・改訂版」)

<夜光塗料の変更>

 夜光塗料は1998〜99年に放射線放出物質を含んだ自発光型トリチウムから、それらを含まず蓄光型のスーパールミノバに変更された。トリチウムを使用している場合は6時位置のバーインデックス下部分に“SWISS-T<25”と表記されている。

 ちなみに“T<25”とは放射量が安全基準の25ミリキューリーよりも低いということを表すものだ。トリチウムは経年変化によってアンティークならではの焼けが楽しめる。そのため、それをみこんでこのトリチウム仕様の1990年代の個体をあえて狙っている人もいるぐらいだ。

<フラッシュフィットの改良>

 2000年頃にラグとブレスレットをつなぐフラッシュフィット(日本では弓カンと言う)というパーツが、別体構造から一体成形されたものに変更され強度が高められている。

ラグとブレスレットをつなぐフラッシュフィット。写真上が2000年ごろに変更された一体型、下が以前の別体だ(シーズ・ファクトリー刊「ゼロからわかるロレックス・改訂版」)

 これは見た目にも容易に判別可能だ。写真上が一体型、下が別体だ。下の写真を見るとちょうど中央のコマに横線が入っているのが見えるが、これが別体になっていることを表している。対して一体型の上の写真にはそれがなく表面が滑らかだ。

 これによって1990年代か2000年代かを把握できるというわけだ。同時期にはGMTマスター以外のスポーツモデルに対しても同様の改良が施された。

<ラグの横穴の有無>

 2003年頃からブレスレットをつなぐバネ棒用のラグ部分の穴がなくなっている。これは単に美観を向上させるための変更なのだろう。自分でブレスレットを外したりする人は少ないと思うが、その場合はかなりやりにくい。もし、たまに変えたりするのであれば、穴ありを選択するのも一考だろう。

美観を向上させるため2003年頃からブレスレットをつなぐバネ棒用のラグ部分の穴がなくなった(シーズ・ファクトリー刊「ゼロからわかるロレックス・改訂版」)

2005年以降に存在するレア仕様とは

 Ref.16710にもアンティークモデルのように、希少とされる珍しい仕様がいくつか確認されており、その有無によっても実勢価格に大きく差が出てきている。その代表となるのが“スティック”と呼ばれるものだ。

 これは、GMTマスターIIのローマ数字の書体が、本来は上と下が繋がった書体なのに対して、2本の棒を並べて置いただけのような単調な書体(写真)が使われている個体がある。その棒のような見た目からスティックと呼ばれている。

ローマ数字の書体が、2本の棒を並べて置いただけのような単調な書体が使われていることからスティックと呼ばれている(シーズ・ファクトリー刊「ゼロからわかるロレックス・改訂版」)

 生産終了時期に近い高年式の一部の個体で確認されているようで、正直なところ理由はわからないが、高年式ということもあって実勢価格はかなり高額になっている。

 またもうひとつレア仕様として知られるのが、本来搭載されているはずのムーヴメント、Cal.3185ではなく、その後にモデルチェンジで登場するRef.116710に搭載されるはずのCal.3186を搭載した個体だ。

 これは、生産終了間近の個体の一部で確認されていることから、ケースのストックに対して、ムーヴメントが不足してしまったために、その代用として新開発の3186を搭載したのではないかと考えられている。これもレア度が高く高額になる。

 さて、GMTマスターに限ったことではないが、実勢価格の高低は製造年代の古さよりも個体のコンディションが大きく関係する。加えてBOXやブレスのコマなど付属品の有無も。これらが整うと、ここに取り上げた仕様変更やレア仕様などがプラス要因として実勢価格に影響してくるというわけだ。そのため実勢価格については、様々な要因が複合的に絡み合うため単純ではない。購入の際はなぜ高いのか、安いのかをショップスタッフに必ず聞いて、納得したうえでの購入をオススメする。

文◎菊地吉正(編集部)

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菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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