【いま話題のラグスポって何だ?】高級ブランドの相次ぐ参入で再注目されている腕時計の新たな選択基準とは!

「ラグスポ」こと、ラグジュアリースポーツという腕時計のジャンルをご存じだろうか。その言葉どおりに高級スポーツモデルを形容する言葉としてこれまでも稀に使われているため、漠然と聞いたことがある人も多いだろう。今後はその基準も明確になるかもしれない。

 筆者が編集長を務める「2019-2020 機械式腕時計年鑑(2019年12月20日刊行)」は、日本で展開する高級時計ブランド196社の新作など代表モデルを掲載した212ページの専門書である。毎年その巻頭特集では、その年の時計業界の動きを総括した記事を書かせていただいているのだが、今号では、2019年高級時計界の新たな潮流として注目したもののひとつに“ラグジュアリースポーツ(以降ラグスポ)”を挙げた。

 だからと言ってこのジャンルが突出していたのかというと、決してそういうわけではないのだが、これまで想定もしなかったドレス系高級ブランドのいくつかが、相次いでこのカテゴリーに参入をはじめるなど、その動きが業界内でも注目されたからである。

 さて、このラグスポについては、2020年1月18日に筆者が書いた記事「【第2回】ポストヴィンテージ時代の腕時計|1970年代に誕生したラグジュアリースポーツ」で、1970年代のオーデマ ピゲのロイヤルオークやパテック フィリップのノーチラスなどを取り上げ、その当時、腕時計の新しいスタイルとして多くのメーカーが開発した、ダイバーズウオッチでもクロノグラフでもない、薄型ながら防水機能をもつシンプルな高級スポーツウオッチを、ラグスポのルーツとして紹介した。

 当時から続くロイヤルオークやノーチラスに至っては、近年再び注目を浴びて世界的にブレイク。現行モデルが何とプレミアム価格になるほどの異常な人気ぶりだ。

 そして2017年にはジラール・ペルゴのロレアートが復活し、19年10月にはショパールが1980年代のサンモリッツをベースにしたアルパイン イーグル、そして同月にA.ランゲ&ゾーネも初のステンレス製スポーツライン、オデュッセウスを発表。さらに今年1月にはH.モーザーがブレスの装備感を追求したストリームライナーをリリースするなど、矢継ぎ早にラグジュアリースポーツ市場への初参入が相次いでいる。このようにハイエンドモデルにおける新たなジャンルとして注目されていることは確かなのである。

 では、ラグスポとはどんな時計を指すのだろうか。実は明確な定義みたいなものはないが、最近の新規参入も含めてこれまでの流れをみていくとひとつの傾向がわかる。それは、ステンレススチールケースにブレスレット仕様を基本としながらも、外装はゴールドモデルに匹敵するほどの高品質な仕上げが施され、しかもムーヴメントは自社製というものだ。これがラグスポのひとつの基準となるのではないか、と筆者は勝手に思っている。

 さて今回は、そんな基準を満たすラグジュアリースポーツとして、最近になってリリースされた前述の、A.ランゲ&ゾーネ、ショパール”、そしてH.モーザーを取り上げたいと思う。

 なお、これら3コレクションについては、“オデュッセウス”をドイツ腕時計の専門サイト、GERMAN WATCH.jpの副編・堀内が、“ストリームライナー”を当サイトの副編・佐藤、そして“アルパイン イーグル”については筆者が担当、それぞれ実機を見て感じた三つの特徴と実際に着けてみた感想を述べさせていただく。

A.ランゲ&ゾーネ“オデュッセウス”

 ステンレススチールはケース素材として現在、最もポピュラーな素材だ。ただA.ランゲ&ゾーネにおいては例外で、これまで頑なに金またはプラチナを素材に用いてきた。それだけに本作はステンレススチールモデルという点だけでも大きな特徴として挙げることができる。付け加えると、12気圧防水を備えたスポーティモデルとして展開されるのも同社では初である。

 その外見上の特徴からラグスポに分類できるが、本作が昨今のブームに乗じたものではないことは、開発に年単位の時間を要する新ムーヴメントが搭載されている点でも明らかだ。L155.1 DATOMATICと名付けられた新キャリバーは、コンセプトに見合ったタフな仕上がりとなっている。従来のランゲムーヴメントとの明らかな違いとして、テンプ受けが片持ちから両持ちになったことと、振動数が毎時2万8800に高められたことが挙げられるが、これはいずれも衝撃や外乱に対する影響を意識したものだ。

 無論、仕上げの美しさや細部の丁寧な作り込みなどは従来に同じである。金無垢のサクソニアなどよりもオデュッセウスのほうが高額であることを踏まえると、作りの良さはむしろ然るべきだが、ステンレススチールでこれほどに高級感を醸し出す造形に仕上げるのは、さすがドイツ最高峰ブランドである。

<オデュッセウスを実際に着けてみた>

 ラグスポと呼ばれるモデルの多くは、ベゼルをフラットにするなどより薄く見せる工夫がなされている。対してオデュッセウスは、マッシブなベゼルや頑強な5連ブレスレットを備えるなど、むしろ重厚な雰囲気が強調されているために大振りに見えるが、ケース径は40.5mmと実は程よいサイズだ。

 11.1mmとやや厚みがある点は多少は気になるが、ヘッドとブレスレットの重さのバランスが取れているため、装着感は意識するほど悪くはない。

■Ref.363.179。ステンレススチール(40.5mm径、11.1mm厚)。12気圧防水。自動巻き(Cal.L155.1 DATOMATIC、毎時2万8800振動)。341万円(2020年3月まで全世界のA.ランゲ&ゾーネ ブティックのみで先行展開予定)。A.ランゲ&ゾーネ TEL.03-4461-8080

文◎堀内大輔(編集部)

H.モーザー“ストリームライナー”

 ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティックの見るべきポイントは三つ。ひとつはブレス。良好な着け心地を追求し、肌に直接触れる裏側は角をすべて落とし肌触りに優れる一方、表側は複雑な造形をもちながらコマとコマの間、サイドに太めのポリッシュを入れて立体感を強調している。

 二つ目は文字盤。本作はクロノグラフだが、ブランドのコアコンセプトである“ミニマリズム”の精神に従い、時刻表示だけでなくクロノグラフ機能もセンター表示に集約。結果、クロノグラフらしからぬ優れた視認性を確保しながら、グリフェ仕上げの美しいフュメ文字盤の存在をも際立たせた。

 そして三つ目はムーヴメント。クロノグラフらしからぬすっきりとした文字盤とは裏腹に、センターに60秒と60分のクロノグラフ積算針を備え、しかも60分積算針は1分ごとに1目盛り分だけ針がジャンプする複雑なフライバック機能を備える。一般的な自動巻きの場合、回転ローターがムーヴメントの大部分を覆ってしまうが、本作では自動巻き機構が文字盤側に配置されているため、その複雑なムーヴメントの構造を隅々まで眺めることができる。機械としての美観にまで配慮されている点は大いに魅力的である。

<ストリームライナーを実際に着けてみた>

 42.3mm径と小さくはないが、手首に沿うように滑らかに動くコマと、ケースからブレスまで一体のデザインゆえに腕なじみが良い。しかも高い視認性を実現しつつ、70年代風の、いわゆる“グランプリダイアル”を採用し、存在感を高めている点も見逃せない。

 ラグジュアリースポーツらしく高い防水性を備えるが、なんと水中でもクロノグラフが使用可能。実際に使うかは別として、クロノモデルながら水を気にせず着けられるというのは、かなり使い勝手が良いのではないか。

■Ref.6902-1200。ステンレススチール(42.3mm径、14.2mm厚)。12気圧防水。自動巻き(Cal.HMC 902、毎時2万1600振動、54時間パワーリザーブ)。世界限定100本。528万円。イースト・ジャパン TEL.03-6274-6120

文◎佐藤杏輔(編集部)

ショパールの“アルパイン イーグル ラージ”

 2019年10月にリリースされたアルパイン イーグル、そのベースモデルとなったのは、80年代にベストセラーとなった“サンモリッツ”というコレクションだ。これは当時、ゴールド製のドレスウオッチを専門に手がけていたショパールにとって初のスポーツウオッチであり、初のステンレススチール製モデルだったのである。

 さて、実機を見て印象的だったのは次の三つ、ひとつ目は8本のビスを使った力強いベゼルとは対照的に、鷲の虹彩(こうさい)をイメージしたという文字盤の独特な装飾が、とりわけ異彩を放ち、シンプルでいて個性的な面も楽しめる点だ。

 二つ目は仕上げの良さ。通常の1.5倍の磨耗耐性と硬度を備えるというレアメタル、ルーセント スティール A223ながら、表面の仕上げは美しく、さすがは名門ジュエラーらしい高い品質を感じる。さらに160万円台という戦略的な価格も特筆すべきポイントだろう。

 そして三つ目は、ベゼルに配された八つのビスのすり割り(マイナス)が、ちゃんとベゼルに沿って向きを整えているところ。些細なことかもしれないが、こういった細部もきっちり正確に仕上げられていところに作りと美観へのこだわりを感じる。

<アルパイン イーグルを実際に着けてみた>

 41mmと大きめだがラグが短いため大振りなケースのわりには細身の筆者でも手首への納まりは悪くなかった。しかも厚さは9.9mmと薄いうえに、ブレスレットのコマも一つひとつ丁寧に作られているのだろう、手首のカーブに対してしっかりとなじみ、仕上げの良さを感じた。

 ただ1点、これはあくまでも筆者の私見だが、クラスプ(バックル部分)のロックについては、もう少し固くても良いように感じた。

■Ref. 298600-3002。ショパール ルーセント スティール A223(41mm径、9.9mm厚)。100m防水。自動巻き(Cal.Chopard 01.01-C、毎時2万8800振動、60時間パワーリザーブ)。161万7000円。ショパール ジャパン プレス TEL.03-5524-8922

写真◎笠井 修

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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