デッドストックで発見された1980年代の角形時計をリビルド(再生) 【OUTLINEのアウトライン|no.22】

 みなさんは“リビルド”という言葉を聞いたことがあるだろうか。自動車業界では再生部品などでよく使われるらしい。時計界ではあまり使われないため、ピンとこない人も多いのではないか。

 そのため正直リビルドと言っていいのかはわからないが、ここに取り上げたアウトラインのレクタンギュラー138BLは、1980年代のバブル期に日本の商社が実際に販売していたスイス製の手巻き式時計で、デッドストックとして発見されたものを筆者が再生した代物だ。

 ただ、メンテナンスだけをしてそのまま再販するのではなく、手を加えて新しく製品化したもののため、タイトルにリビルド(rebuild)と表現させていただいた。おそらくはこのようなケースであれば、高級時計メーカーなら、希少なオールドムーヴメントだけを活用しケースも含めて新しく作ってしまうはず。その意味ではかなり希なケースなのかもしれない。

ムーヴメントとケースは活用して文字盤だけをまったく別のデザインにして製品化したアウトライン・レクタンギュラー138BL

 この角形時計は未使用のまま数十本が発見され、れっきとしたスイスメイド。80年代のフォンテンメロン社製手巻きムーヴメントと角形ケースについてもスイスで作られた。もちろん大手時計メーカーのごとく、ケースも含めてすべて作り変えてまったくの新製品にすることもできないわけではないが、10本、20本のレベルでケースから製造すると、1本あたりのコストが莫大になり、当然のごとく定価が跳ね上がってしまうためあまり現実的でない。そのためムーヴとケースはそのまま活用し、インデックスや時分針など文字盤まわりだけに手を加えて、まったく別物のデザインに作り変えたというわけだ。

 これのオリジナルのデザインはノーインデックスタイプのドレスウオッチとして作られており、DCブランド全盛の80年代らしいものだった。それを今回さらに歴史を過去に戻して1940〜50年代当時の雰囲気にガラっと変えている。もちろん、デッドストクットとはいえ、コンディションの良いものだけを使うため、その数は多くて20本、少ないと6本しか製品化できないというものもあった。

レクタンギュラー138BLに搭載されているスイス・フォンテンメロン製の手巻きムーヴメント。1980年代当時の希少なオールドムーヴメントだ

 搭載するムーヴメントは、フォンテンメロンの手巻きキャリバーFHF138だ。フォンテンメロン社といっても、現在はオメガなどが属するスウォッチグループのムーヴメントメーカー、ETA社に吸収されて存在しないため知らない人も多いと思うが、創業は1793年と古く、1900年代初頭には年産1000万個、従業員数約1000人を抱える大手で、ムーヴメント専業メーカーとしてはかつて2番目の生産量を誇っていた。小振りな手巻きムーヴメントを得意とし、1940年代にはロレックスの手巻きモデルにも採用されていたほどで、その信頼性は高かったと言える。

文字盤は太めのアラビア数字にアルファ針という1950年代の角形時計によく見られたデザインに変更、落ち着いていてビジネスシーンにしっくり決まる(シルバータイプ。ゴールドはトップの写真参照)

 さて、このレクタンギュラー138BLはゴールド(金メッキ)タイプとシルバーの2種類ある。製品化できたのはゴールドが18本、シルバーが15本だった。ケースサイズは横が23.5mmで縦が37mmと小振りなため、ゴールドであっても嫌味なく着けられる。さすがにカジュアルすぎるファッションにはどうかと思うが、ジャケットスタイルであれば、幅広く合わせられ、しかも大人っぽく決まるので結構使える。アンティークウオッチのサイズ感が好きな方や手首が細い方にはぜひおすすめだ。価格はどちらとも13万2000円。

詳細はコチラ
レクタンギュラー138BL(シルバー)
レクタンギュラー138BL(ゴールド)

菊地 吉正 – KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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