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高機能+魅力的な表情に仕上がったカール F. ブヘラのマネロ フライバックを実機レビュー

 一般の知名度はさほど高くないものの、製品クオリティはそれに比して非常にハイレベルな時計ブランドの代表格がカール F. ブヘラだろう。もともとは19世紀後半にスイス中央部のルツェルンで創業した高級宝飾店であり、やがてオリジナルの時計を製造販売。コンプリケーションムーヴメントまで自社製造可能なマニュファクチュールであり、オーソドックスで奇をてらわないデザインながら、細部まで凝った丁寧な仕上げの製品は目の超えた時計ファンからの評価が高い。スイス時計産業の紆余曲折のなかでも堅実な経営体制を貫き、現在においても創業者一族が経営している点も信頼に値するポイントだろう。

 フライバッククロノグラフなどの古典的な機構を得意とするブヘラだが、このブランドを最も特徴付けている機構はペリフェラルローターだ。ペリフェラルローターとは自動巻きムーヴメントのなかで大きな面積を占めるローターをリング型にして、ムーヴメント外周に沿うように配置。このためムーヴメントのベース部分を隠すことなく、ユーザーが美しく仕上げられた機械の動きを視覚的に楽しめるというものだ。ケース裏面をシースルー仕様にしている時計は数多いが、自動巻きだとほとんど大きなローターしか見えないことがほとんどだ。その点、正面だけでなく裏面からも時計を愛でることができるという意味では、ペリフェラルローターは非常に効果的な機構と言えるだろう。もちろんリング型という特殊な形状でも問題なく時計が動くように、両方向巻き上げを採用して効率を十分考慮した設計がなされている。

マネロ フライバック
■Ref.00.10919.08.53.01。SS(43mm径/14.45mm厚)。3気圧防水。自動巻き(Cal.CFB 1970)。96万8000円

 そうしたユニークな機構に積極的に取り組む一方で、今回紹介するマネロのフライバックは非常に実用性を重視した設計がなされたモデルだ。まずぱっと見た感じ、外装の美しさに目を奪われる。ケースデザインやラグのカーブ、古典的なマッシュルーム型プッシュボタンなど、ディテールはいずれもオーソドックスなのだが、ポリッシュの使い分けが見事で、特にケースサイドの鏡面仕上げが美しい。2カウンターのダイアルもデザインのまとまりが良く、抜き針もよくマッチしている。ダイアルにはタキメーターも装備され、6時位置にはカレンダー表示があしらわれているが、クラシカルな雰囲気を壊すことなく上手にまとめていると感じる。ブルーのトーンも深みがあって美しい。

 搭載されているムーヴメントCal.CFB1970は、4振動のコラムホイール式クロノグラフ。前述のようにブヘラはマニュファクチュールであるが、この時計に関してはコストパフォーマンスを重視してのことか、エボーシュから供給されたベースムーヴメントにフライバッククロノグラフ機構を追加した機械を採用している。クロノグラフのプッシュボタンを押したときのかちっとした感触もいい手応えで、マッシュルームボタンのサイズも程良いため操作感は上々だ。ただパワーリザーブは42時間と現代の基準からするとやや弱めである。

 今回はテキスタイルストラップモデルをチェックしたが、このストラップも質が高くて装着感は良い。ほかにもレザーストラップとブレスレット、さらにゴールドケース、ダイアルの色違いなどバリエーションは多いが、ステンレスモデルであれば価格は概ね100万円前後だ。最近の主要ブランドのクロノグラフはだいたいこの価格帯に集中しているが、フライバックということもあってそのなかで比較してもまったく引けを取らない。上品でクラシカルなクロノグラフとしては、選択肢のかなり上位に入ってくるだろう。渋いモデルではあるがスポーティブな雰囲気もあって、なにより丁寧に作られていることが感じられるだけに、使い込んでいくうちに愛着が湧きそうだ。

【問い合わせ先】
スイスプライムブランズ TEL.03-6226-4650
https://www.carl-f-bucherer.com/ja

 

構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎笠井 修

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