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【北欧デザイン×スイス製】スウェーデンの本格時計、Tusenö【実機レビュー】

【Wearability:装着感について】

時計は直径が39mm、ラグからラグの上下幅が約47mm、厚さ約10.5mm。重さが150gという仕上がりだ。近年のダウンサイジングのトレンドともリンクするサイズ感となっており、デイリーユースで使うには最適なサイズだ。39mm以下では小さすぎて文字盤のデザインや質感が生きてこないし、39mmを超えてくると重厚でソリッドなベゼルやケースが過度に強調されてしまったことだろう。

肝心の装着感だが、率直に言ってとても快適だ。筆者は手首周りのサイズが約17mmなのだが、ラグの上下が余裕をもって手首の内側に納まっており、150gの重さも適度な重量感を感じられて心地よい。2023年発表されたロレックスのエクスプローラー40がちょうど同じくらいのサイズ感で、直径40mm、重さ142gという仕様なので、メンズウオッチとして、まさに一般的なサイズ、重量といえるだろう。

装着感を高めているポイントとして、ぜひ注目しておきたいのが時計本体とブレスレットを繋いでいる弓カンの作りだ。ラグの先端よもり内側にブレスレットが設置される設計になっているため、ブレスレットの付け根の可動域が広く、手首とブレスレットの隙間を詰めて装着することができるのだ。

ラグと手首の間に隙間ができてしまうと装着時の安定感がなくなり、見た目も悪くなるが、このブレスレットにそうした心配はいらないだろう。また、弓カンのデザインをラグのフォルムとしっかり連動させている点も好印象を感じるポイントだ。ウィンドシーカーはケース、ブレスレットが直線を生かした造形に仕上げられているのも魅力だが、弓カンとラグのデザインに一体感をもたせているので、見た目のバランスがとても良い。手の届く価格ながら、完成度をしっかりとつきつめたデザインであることがうかがえるポイントだ。

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ブレスレットは安価な時計に見られる凸型のコマを使用した擬似的な3連ではなく、削り出しのコマを三つ組み合わせた本格仕様。表面の加工はケースと同じくヘアライン仕上げをベースにしており、中央のコマは上下に面取りを施して鏡面に仕上げている。左右のコマも両サイドを面取りしており、この面取り部分とサイドが鏡面に仕上げとなっている。肌に直接触れる裏面にも同様の面取りを施しているが、汚れを目立ちにくくして肌触りを良くするため、全面がヘアライン仕上げで統一。ブレスレットはやや遊びが多い印象も感じるが、その反面でコマの可動域が大きいため手首にしっくりとフィットしてくれる。

ちなみに、立て付けの悪いブレスレットは体毛が挟まれて不快に感じることがあるのだが、ウィンドシーカーのブレスレットは一切、そうしたストレスを感じることなく快適に装着できた。なお、メタルブレスは、ケースと接合する部分がレバー式になっているため、工具を使わずに着脱が可能だ。


【Movement:ムーヴメントについて】

裏ブタはサファイアクリスタルを設置したシースルーバック仕様。搭載されているのがSellitaのCal.SW200-1でスペックは2万8800振動(ハック付き)、41 時間パワーリザーブを備えている。高級機のようにロングパワーリザーブではないのは留意点と言えるが、他社の普及機と比べても遜色ないスペックを備えており、デイリーユースのモデルとして安心して使用できる。汎用ムーヴメントのため、仕上げについて特筆すべき点は見当たらないが、ローターやテンプの動きを楽しめるのは魅力だ。


【General review:まとめのコメント】

誤解を恐れずに言うと、機能やデザイン要素が多いモデルはある意味でデザインの完成度が低くても情報量でごまかしやすい側面がある。シンプルな3針モデルは、要素が少ないため、ごまかしが利かず、デザインの良し悪しがはっきりしてしまう場合は多いのだ。さらに言うと、シンプルな3針はブランドの個性を表現するハードルも高くなる。

その点、今回実機レビューした“ウィンドシーカー”は、時刻表示とデイト表示というシンプルな時計だが、海洋国家として歴史を刻んできたスウェーデンのアイデンティティーをデザインで表現している点が素晴らしい。デッキをモチーフにした文字盤はオメガでも採用しているコンセプトだが、トゥセノーのウィンドシーカーでは、湾曲させたラインに仕立て、外周リングから中央のサンレイ文字盤へ至る立体的な造形によってしっかりと独自性を打ち出している。

直線を強調したソリッドなケース、ブレスレットの意匠も魅力的で、仕上げの質感、装着感ともに良好だ。700米ドル以下(649米ドルで約9万6000円)で3針時計を探しているならば、必ず選択肢に入れておきたい時計と言えるだろう。


》Tusenö(トゥセノー)
公式サイト
https://tuseno.com


文◎船平卓馬(編集部)

 

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