1980年台後半から始まった機械式時計ブームのなかで、その人気を牽引する存在のひとつとなったフランク ミュラー。同社の名前を一躍有名にしたのが美しい流線形のフォルムが特徴のトノーケースだろう。
現在でもトノーケースといえばフランク ミュラーの名前が思い浮かぶほど強烈なインパクトを時計界に残しているが、実はトノーケース自体はアンティークウオッチにも見られる古典的なデザインであり、機械式時計ブームの時期においてもフランク ミュラーよりも前に、トノーケースで人気を博したポストヴィンテージモデルが存在している。それが、ジラール・ペルゴのリシュビル クロノグラフだ。
GIRARD-PERREGAUX(ジラール・ペルゴ)
リシュビル クロノグラフ
1993年に登場し、当時、ジラール・ペルゴの主力商品となっていたGP7000クロノグラフと双璧を成したポストヴィンテージを代表する人気モデルのひとつ。グラマラスなトノーケース、ひし形の造形が印象的なアルファ針、装飾的なビザン数字を配置したギョーシェ文字盤など、古典的な意匠をモダンにアレンジしたデザインが魅力的だ。
リシュビルが登場したのは93年。当時、ジラール・ペルゴは87年に発表したスポーティな機械式クロノグラフを主軸とするG P7000シリーズで人気を博していたが、元レーサーでもある故ルイジ・マカルーソが92年にCEOに就任し、GP7000に続く新たな旗艦モデルとしてリシュビルを開発したのだ。
最大の特徴と言えるのが、スポーティなGP7000とは異なるエレガントなトノーケース。丸みを帯びたベゼルがグラマラスな雰囲気を醸すトノーケース。側面は曲線を抑えた造形を採用し、程よい厚みが存在感を主張する。丸型のプッシュボタンを採用した手巻きモデルに対して、自動巻きモデルは下部に向かってシェープされた楕円に近いプッシュボタンを採用。ケースのリンクした造形が優美さを醸す。
2カウンタークロノグラフやミニッツサークルなど文字盤は古典的なスタイを踏襲しているが、個性的なトノーケースでデザインをまとめることで、クラシックでありつつ他にはない個性を主張しているのがなんとも魅力的だ。
今回クローズアップした自動巻きモデルのほかに、レマニア製のキャリバー1872を搭載し、自動巻きに比べてやや古典的なテイストに仕上げた手巻きモデルもラインナップされている。自動巻きは文字盤12時位置に“automatic”の表記を備え、楕円に近いプッシュボタンを装備。手巻きモデルはモデル名の表記と丸型のプシュボタンを採用している。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
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