小スライド 連載記事 @kikuchiのいまどきの時計考

【知ってた?】冬の“トレンチコート”と同じ「塹壕」に由来する“トレンチウオッチ”のこと!

1910年代の第1時世界大戦期にアメリカ陸軍に納入されていたティソ製の腕時計。溶接されたワイヤーラグを持つトレンチウオッチだ

この時期に活躍する“トレンチコート”。そもそもこれの由来は何かご存じだろうか。英語のトレンチとは「溝」のことである。

第1次世界大戦は平地が多く、敵の銃弾から身を守るために塹壕(溝)が掘られ、この塹壕が重要な戦術だった。トレンチコートはそんな塹壕内でイギリス陸軍が寒さをしのぐために着用していた防水性に優れたコートに由来する。

同様に腕時計にも通称“トレンチウオッチ”と呼ばれるものがある。あまり一般的ではないためトレンチコートに比べるとほとんど知られていないと思うが、実はこれも第1次世界大戦の“トレンチ”、つまり塹壕からきているのだ。

ではトレンチウオッチとはどのような時計を指すのか。1900年代初頭において時計といえば主流はまだ懐中時計だった。ただ瞬時に時刻を確認する必要に迫られた戦場において、時計を手首に着けていち早く確認できるように腕時計化が加速する。

そのなかで生み出されたのがベルトを縫い付けることができる太い針金のようなラグを溶接したワイヤーラグだった。つまりこのワイヤーラグを持つ時計が第1次世界大戦時に大量に使用されたことから、このワイヤーラグ仕様の軍用時計を“トレンチウオッチ”の通称で呼ばれるようになったと言われる。

ワイヤーラグ風の仕様でクラシカルな雰囲気をグッと強めたアウトラインの手巻きモデル、レクタンギュラー138IV

ベルト交換が不便なためいまではほとんど見られないが、クラシックな雰囲気を出す手法として採用されることもゼロではない。

例えば写真のアウトラインの手巻きモデル“レクタンギュラー138IV(11万円)”のように、一見するとワイヤーラグっぽく見えるものの、実際には1本のワイヤーで繋がっていない。ベルトに隠れて見えないが間にバネ棒を使っていてベルト交換できる仕様(次のページに写真を掲載)が取られているのだ。

アウトライン・レクタンギュラー138IVはコチラ

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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