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「ロレックス認定中古プログラム」海外の業界関係者が指摘するメリットとデメリットとは!|菊地吉正の【ロレックス通信 No.240】

2022年12月に突如としてロレックスが発表した“認定中古プログラム”。日本での実施は見送られているが、ヨーロッパを中心に展開されている。

当連載では実施から7カ月後の現地の状況について、実際に実施店舗に行ってきたという人の話として2023年7月30日の当連載で取り上げた(関連記事参照)。そして今回は視点を変えて、そもそも海外はこの認定プログラムについてどう見ているのかを紹介したい。

話を聞いたのは、ドイツに本拠を構え、毎月900万人が利用する世界最大級の高級腕時計のECサイト“クロノ24(Chrono24)”で、ソーシャルメディアとコンテンツマーケティングを担当するバラッシュ・フェレンツィ氏である。

バラッシュ氏は、認定中古プログラムのメリットについてこのように述べている。

「ロレックスがこのサービスを提供し始めた頃、認定中古価格は非常な高騰を見せていました。購入希望者は、平均的な市場価格より75%以上高い価格を支払わなければならなかったことも。現在この傾向はなくなり、価格はある程度合理化されています。

また、ロレックスの認定中古時計は、“完全な本物”であることを保証するものです。ロレックスは通常、時計の真贋についてコメントすることはなく、過去のサービス内容を提示することもありません。つまり、認定中古品を所持するということは、自身が所持するロレックスが完全な本物であることを保証できる、うってつけの選択だと言えるでしょう」

インタビューに答えてくれたChrono24のバラッシュ・フェレンツィ氏(写真◎Chrono24)

つまり、ユーザーにとっての認定中古プログラムは、本物であることが保証される安心感が大きいと語る。その反面で現在の中古市場に目を向けるとデメリットも大きいと指摘する。

「ただし認定プログラムは、いかに“オリジナル”であるかが重要であり、ロレックス中古市場の大きなセグメントを占めるヴィンテージロレックス市場においては、欠点だとも言えるのです。

例えば、ヴィンテージサービスダイアルのサブマリーナーは、認定中古時計の観点からは“完全な本物”かもしれませんが、文字盤がサービスパーツであることは、ヴィンテージモデルとしてのロレックスの価値に多大な影響を与えるでしょう。

つまり、サービスパーツが付いたヴィンテージロレックスは、ブランドによれば本物かもしれませんが、市場においては完全にオリジナル状態のヴィンテージロレックスよりも価値が低いということです」

ロレックスの認定中古品は、古くなったパーツを新品に交換するなどして、製品として完璧の状態で販売される。普通に考えたらユーザーとしてはありがたい話なのだが、一方で、ロレックスの巨大な中古市場全体で考えると必ずしもそうとは言えない。

なぜかというと、たとえ経年変化によって一部が変色していようが、それはその個体のもつ歴史的な味わいとして重視される。つまりいかに最初に販売された当時のままの状態なのかが中古市場では価値として優先されるからだ。

そのため認定中古品がパーツ交換によって最初の状態から変更が加えられてしまうと、それがどんなに素晴らしくても市場価値としては下がってしまいかねない。認定中古プログラムにはそういった点に注意する必要があるとバラッシュ氏は指摘する。

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菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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